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プログラミング教室の開業|習い事として開くか、塾に足すか

プログラミング教室を始めるかどうかを考えている段階だと思います。必修化で需要があるという話はよく聞くはずです。

その必修化とは別に、もうひとつ動いたことがあります。高校の「情報Ⅰ」が共通テストの出題科目になり、令和8年度は305,202人が受験しました。物理145,203人の2.1倍です。

この2つは、性質の違う理由です。前者は習い事を売る理由、後者は塾が扱う理由になります。どちらを根拠にするかで、必要な投資も競う相手も変わります。順に分けていきます。

教室の机に開いたノートパソコン2台と、学習用の小型ロボット、色のついたブロックが置かれている。画面は消えていて、人物は写っていない
※写真はイメージです。特定の教室や事例を示すものではありません。

SHORT ANSWER

結論から。 判断の分かれ目は、開くかどうかではなく単独で開くか、いまの塾に足すかです。 経済構造実態調査(費用内訳割合)によると、費用総額に占める賃借料は学習塾10.5%、習い事の教室を含む教養・技能教授業10.4%で、比重はほとんど変わりません。 習い事だから場所代が軽い、という構造にはなっていません。 一方、受験科目としての情報Ⅰは305,202人が受験する規模で、いまの生徒にそのまま出せます。

受験科目としての規模は第1章、必修化との違いは第2章、単独と併設の分かれ目は第6章、費用と収支は第7章で扱います。 加盟の損得計算そのものはフランチャイズのページ、 業態ごとの比較は業態別のページにあります。

受験者数で見ると、情報Ⅰはすでに物理を上回る

新設された科目は最初は小さい、と考えるのが普通です。情報Ⅰは違います。高校で全員が履修する科目なので、始まった時点で母数が大きい状態でした。

令和8年度 共通テストの科目別受験者数(本試験) 大学入試センターの共通テスト実施結果。情報Ⅰは令和7年度が初回で、これが2年目 英語(リーディング) 455,114 国語 438,156 数学Ⅰ,数学A 343,000 情報Ⅰ 305,202 化学 181,584 物理 145,203 生物 56,314 情報Ⅰは物理の2.1倍、生物の5.4倍。化学も上回っています 平均点は初回の69.26点から56.59点へ12.67点下がりました

読み方 オレンジが情報Ⅰです。305,202人が受験していて、物理145,203人の2.1倍、生物の5.4倍にあたります。 化学181,584人も上回っています。 新設の科目だから小さいだろう、という見立ては当たりません。共通必履修科目なので、最初から理科の主要科目より母数が大きい状態で始まっています。 平均点は初回の69.26点から56.59点へ12.67点下がりましたが、2年分しかないため難化の傾向とは呼べません。初回と2回目で難易度が違った、というところまでです。

出典: 大学入試センター「共通テスト 受験者数・平均点の推移(本試験)」(https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/suii/R3_.html)。当社が同ページの表から転記しました。平均点は100点満点に換算した点数。情報Ⅰは令和7年度が初回で、令和3〜6年度の表には区分が無い。 情報Ⅰの前年比は、令和7年度に別に立っていた「旧情報」22,171人を足すと1.1%、 足さずに情報Ⅰだけで比べると9.1%です。 今後この人数が続くかどうかは、各大学が情報Ⅰを課すかどうかにも左右されます。

令和8年度の共通テストで、情報Ⅰの受験者は305,202人。 物理145,203人の2.1倍、化学181,584人も上回っています。 物理や化学と同じかそれ以上の生徒が、この科目を受けています。

もう1つ、平均点が動いています。初回の令和7年度が69.26点、令和8年度が56.59点で、12.67点下がりました。 ただし2年分しかないので、これを難化の傾向と呼ぶことはできません。 初回と2回目で難易度が違った、というところまでが読み取れる範囲です。事業計画の前提に置くなら、あと数年の動きを見てからになります。

この数字が示していないこと

これは共通テストの受験者数であって、塾に対策を求めに来る人の数ではありません。 情報Ⅰの受験者が増えても、その対策が教室に来るとは限らず、学校の授業と過去問で済ませる生徒も多いはずです。 ここで言えるのは、対象になり得る母数が存在することまでで、それをどう取るかは別の設計になります。

同じ言葉のなかに、性質の違う2つの線がある

プログラミング教室の開業を勧める文章は、ほぼ必ず必修化から始まります。この根拠だけで事業を組むと、対象も競合も習い事の側になります。

「プログラミング教育」には、性質の違う2つの線がある どちらを根拠にするかで、開く教室の形が変わる 線1 学校で必修になった 小学校は令和2年度から。中学校は技術・家庭科で 扱う内容が充実した → 学校で触れる子が増えた 習い事として売る理由になる 線2 受験科目になった 高校に共通必履修科目「情報Ⅰ」が新設され、 共通テストでは令和7年度から出題されている → 令和8年度は305,202人が受験 塾が扱う理由になる 対象は主に小学生 対象は高校生と、その前の学年 単独の教室として開く 習い事の市場で、他の習い事と並ぶ 場所も集客も新しく用意する いまの塾に足す 受験の科目として、いまの生徒に出せる 場所と名前はすでにある どちらの線を根拠にしているかで、必要な投資も、競う相手も変わります

読み方 左が必修化の線です。学校でプログラミングに触れる子が増えたので、習い事として売る理由になります。対象は主に小学生です。 右が受験科目化の線です。高校に共通必履修科目「情報Ⅰ」が置かれ、共通テストでも出題されるようになりました。こちらは塾が扱う理由で、対象は高校生とその手前の学年です。 プログラミング教室の開業を勧める文章のほとんどは、左の線だけを根拠にしています。 左の線で開くと、他の習い事と並んで選ばれる勝負になります。右の線なら、いまの生徒にそのまま出せます。 なお、必修化の段階でも習い事として通わせる保護者はいました。2つの線は買う人が完全に分かれるわけではなく、買う理由が違います。

必修化の出典: 文部科学省「教育の情報化に関する手引」第3章 プログラミング教育の推進(PDF)。当社がPDFを取得して該当箇所を確認しました。 受験者数の出典: 大学入試センター「共通テスト 受験者数・平均点の推移(本試験)」(https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/suii/R3_.html)。 高等学校学習指導要領の実施年度は、一次のページで確認できなかったため書いていません。 確認できたのは、平成30年告示の学習指導要領で「情報Ⅰ」が共通必履修科目として新設されたことと、共通テストでの出題が令和7年度からであることです。

文部科学省「教育の情報化に関する手引」によると、小学校では小学校学習指導要領(平成29年告示)において、令和2年度からプログラミング教育を行うこととしているとされています。独立した教科ではなく、算数・理科・総合的な学習の時間などのなかで行うという形です。 中学校は技術・家庭科技術分野で扱う内容が充実しました。 どちらも学校のなかの話で、学校の外で何かを買う必要は生じていません。

高校は違います。全ての生徒が必ず履修する科目(共通必履修科目)「情報Ⅰ」を新設し、全ての生徒がプログラミングのほか、ネットワーク(情報セキュリティを含む)やデータベースの基礎等について学ぶ。「情報Ⅱ」(選択科目)では更に発展的に学ぶ。 履修が全員に及ぶ科目が、そのまま共通テストの出題科目になりました。対策の対象が、触れさせることから点を取らせることに変わります。ただし各大学が情報Ⅰを課すかどうかは大学ごとに違うため、点数が合否にどれだけ効くかは志望校によります。 必修化の段階でも塾に通わせる保護者はいましたが、そのときの理由は「触れさせたい」でした。受験科目になると、理由が「点を取らせたい」に変わります。

塾が扱えるのは後者です。前者は、学校で触れた子に「もっとやらせたい」と思う保護者に売る商売で、 ピアノや水泳と同じ棚に並びます。同じ「プログラミング教育」という言葉でも、買う理由も買う人も違います。

学年が上がるほど、教科としての位置づけがはっきりする

必修化を1つの出来事として扱うと、小・中・高の違いが消えます。文部科学省「教育の情報化に関する手引」は、3つを分けて書いています。

学校段階ごとの位置づけ(文部科学省「教育の情報化に関する手引」 第3章より)
段階 どこで扱うか
小学校 独立した教科ではなく、算数・理科・総合的な学習の時間などのなかで行う
中学校 技術・家庭科の中
高等学校 情報科の必履修科目

小学校では独立した教科を置かず、算数・理科・総合的な学習の時間などの中で扱います。中学校は技術・家庭科の中に入り、高校では情報科の必履修科目になります。学年が上がるほど、教科としての位置づけがはっきりしていきます。ここまでが手引から読み取れる範囲です。買う理由が「触れさせたい」から「点を取らせたい」に変わるのは、第1章で見たとおり情報Ⅰが共通テストの出題科目になったためで、位置づけの違いだけから出ることではありません。

中学は見落とされがちです。文部科学省「教育の情報化に関する手引」によると、中学校では技術・家庭科技術分野において、プログラミングに関する内容を充実(「計測・制御のプログラミング」に加え、「ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミング」を学ぶ)とされています。計測・制御だけでなく、ネットワークを使う内容まで入っています。

中学を主商材にはしにくい

中学生は塾の在籍の中心ですが、プログラミングが入るのは技術・家庭科で、国語・社会・数学・理科・外国語のいわゆる5教科ではありません。定期テスト対策としての需要の出方が5教科と違うため、ここを単独の商材にするのは難しくなります。中学で見るべきなのは、単独の講座としての需要ではなく、高校の情報Ⅰまでつなげられるかです。いまの塾に中学生が在籍しているなら、高校で情報Ⅰを受ける生徒がすでに自塾にいることになります。中学生を抱えていない塾や単独開業では、この線は使えません。小学生を習い事として集め直すのと、いまの中学生の在籍を情報Ⅰまで伸ばすのとでは、必要な時間も費用も変わります。

情報Ⅰは、プログラミングだけの科目ではない

受験科目として扱うと決めたなら、次に確かめるのはカリキュラムの範囲です。いまのプログラミング教室のカリキュラムが、そのまま対策になるとは限りません。

情報Ⅰが扱う範囲と、習い事の教室が扱う範囲 文部科学省「教育の情報化に関する手引」が挙げている領域を並べたもの 情報Ⅰが扱う領域 習い事の教室が扱う範囲 プログラミング 扱っている ネットワーク(情報セキュリティを含む) 扱っていないことが多い データベースの基礎 扱っていないことが多い 塗られているのは3つのうち1つだけです いまの教室をそのまま出しても、情報Ⅰの対策にはなりません

読み方 左が情報Ⅰの扱う領域、右が習い事の教室が扱う範囲です。塗られているのは、いちばん上の1つだけです。 文部科学省「教育の情報化に関する手引」は、高等学校の「情報Ⅰ」について、生徒がプログラミングのほか、ネットワーク(情報セキュリティを含む)やデータベースの基礎なども学ぶとしています。 科目の名前がプログラミングではなく「情報」であることの意味が、ここにあります。 受験科目として扱うつもりで習い事のカリキュラムを買うと、範囲が足りません。 加盟を検討するときも、その教材が情報Ⅰの範囲に対応しているかは確認する項目になります。

出典: 文部科学省「教育の情報化に関する手引」第3章 プログラミング教育の推進(PDF)。当社がPDFを取得して該当箇所を確認しました。 左は文部科学省の記述に挙がっている領域を並べたもので、出題比率や配点を示すものではありません。 右は一般的な小学生向けカリキュラムを想定した当社の整理で、教室によって扱う範囲は異なります。

文部科学省「教育の情報化に関する手引」によると、情報Ⅰではプログラミングのほか、ネットワーク(情報セキュリティを含む)やデータベースの基礎なども学ぶことになっています。 科目の名前がプログラミングではなく「情報」なのは、扱う範囲がプログラミングより広いためです。

小学生向けのプログラミング教室が扱っているのは、多くの場合そのうちのひとつです。 ブロックを組んでキャラクターを動かす形の教材は、考え方を身につけるためのもので、ネットワークやデータベースを扱う設計にはなっていません。

加盟を検討するなら、更新の負担を誰が持つかを確認します。 「情報Ⅰ対応」と書かれていても、対応しているのがどの領域かは、教材の目次を見ないと分かりません。 習い事として売るための教材と、受験科目として教えるための教材は、別のものだと考えたほうが安全です。

習い事の器でも、費用に占める家賃の比重は塾と同じ

習い事の教室は塾より小さく始められる、という感覚があります。設備が少なく、席数も要らないからです。 費用の側から見ると、その感覚は当たっていません。

塾の器と習い事の器で、費用のかかり方はどれだけ違うか(2025年) 経済構造実態調査(費用内訳割合)。費用総額に占める割合。左=学習塾(823)/右=教養・技能教授業(824) 学習塾 教養・技能教授業 給与総額 37.3% 31% 賃借料(土地・建物) 10.5% 10.4% 広告宣伝費 8.1% 7.1% 外注費 5.7% 6.3% 減価償却費 3.7% 2.2% 水道光熱費 1.4% 2.2% 賃借料は10.5%と10.4%。器を替えても、家賃の重さは変わりません はっきり違うのは給与総額(37.3%と31%)だけです

読み方 左が学習塾、右が習い事の教室が含まれる「教養・技能教授業」です。 賃借料(土地・建物)は10.5%と10.4%で、ほとんど同じです。 習い事だから場所代が軽い、ということはありません。 はっきり差が出るのは給与総額で、37.3%に対して31%。指導者にかける額は習い事のほうが小さくなります。 つまり、習い事だから場所代の比重が軽い、という構造にはなっていません。 新しく場所を借りれば、費用の1割前後を占める費目が新たに乗ります。すでに家賃を払っている教室に足すのとは、出発点が違います。

出典: 総務省「経済構造実態調査」事業区分(中分類、一部小分類)別費用内訳割合(統計表ID 0004055483)。政府統計の総合窓口(e-Stat)のAPIから当社が取得しました。 (産業共通)の費目のみ。費用総額にはほかに「その他の経費」等が含まれ、合計は100%にならない。プログラミング教室だけを取り出した区分は日本標準産業分類に無く、この区分には音楽教室・書道教室・そろばん教室なども含まれる。 学習塾側の注記: (産業共通)の費目のみを掲載している。費用総額にはこのほか「その他の経費」等が含まれ、合計は100%にならない。差分が利益になるわけではない。 ここで比べているのは費用総額に占める割合であって、家賃の実額ではありません。教室の規模が違えば金額は変わります。

賃借料(土地・建物)は、学習塾10.5%に対して教養・技能教授業10.4%。 差は0.1ポイントしかありません。 はっきり違うのは給与総額で、37.3%に対して31%。指導者にかける額は習い事のほうが小さくなります。

ここから言えるのは、習い事だから場所代の比重が軽い、という構造にはなっていないということです。 新しく場所を借りれば、費用の1割前後を占める費目として家賃が新たに乗ります。 これは割合の話で、実際の家賃の額が塾と同じという意味ではありません。規模も坪数も違えば金額は変わります。 人件費は抑えられますが、それは単価も抑えることとセットになります。

逆に言えば、すでに家賃を払っている教室に足す場合、この最大の固定費が増えません。 同じ事業を始めるのに、出発点の負担がまったく違います。

単独で開くか、いまの塾に足すか

ここまでの3つを重ねると、選べる道は2つに絞れます。 どちらの線を根拠にするかと、どちらの器で始めるかは、揃えたほうがうまくいきます。

単独開業と、既存の塾への併設の違い
項目 単独で開く いまの塾に足す
家賃 新規に発生する 増えない
最初の生徒 ゼロから集める 在籍者に案内できる
主な対象 小学生(習い事) 高校生と、その手前の学年(受験)
競う相手 他の習い事とプログラミング教室 情報Ⅰを扱う塾と、学校の授業
講師に必要なもの 教材の進行と一次対応 教科として教えられること
やめるときの損失 物件の原状回復と違約金が残る 物件は残らない。教材・機材・講師の契約は残り得る

最後の行が効きます。併設なら、うまくいかなかったときに物件の契約だけは残りません。 教材のライセンスや機材の残債、講師との契約は併設でも残るので、ゼロで戻せるわけではありません。 それでも、単独開業で物件の原状回復と違約金まで背負うのとは差があります。試すこと自体の値段が違うということです。

すでに塾をお持ちなら、まず併設で試し、在籍が積み上がってから単独の教室を考えるこの順序なら無理がありません。 これから塾を開く段階なら、プログラミングを先に置くのではなく、塾を立ち上げてから足すほうが、固定費の重なりを避けられます。 開業そのものの手順は開業ガイドで扱っています。

最初にいくらかかり、あとにいくら残るか

前章までで、どの線を根拠にするかと、どの器で始めるかが決まりました。ここからは費用と収支の話です。 本ページでは初期費用の相場も、オーナーの年収の目安も出しません。 プログラミング教室だけを取り出した公的統計が無く、出所をたどれない数字を前提に置くと事業計画ごと狂うためです。

代わりに出せるのは、どの費目が要るかと、単独と併設でどれが消えるかです。金額は自塾の見積もりを入れてください。

開業時にかかる費目と、既存の塾に足す場合の扱い
費目 単独で開く いまの塾に足す
物件(保証金・仲介・内装) 要る 要らない
機材(パソコン・タブレット・ロボット教材) 要る。生徒数に比例して増える 要る(同じ)
教材・カリキュラム 自作か購入か加盟 同じ
加盟金・研修費(加盟する場合) 要る 要る(同じ)
開業時の広告 ゼロから知ってもらう必要がある 在籍の保護者に先に案内できる
法人設立・届出 個人なら開業届。法人にするなら設立費用 多くの場合は不要。ただし法人の登記事項に教育・学習支援の目的が無ければ目的変更登記が要る。事業所を新設・移転するなら届出の対象になる

機材だけは、併設でも同じだけかかります。パソコンやロボット教材は生徒数に比例して増える費目で、既存の教室の余りでは埋まりません。併設が軽くなるのは物件と広告と設立の3つで、機材と教材は軽くなりません。

許認可は要りませんが、契約の書面は別です

プログラミング教室を開くのに、業種としての許認可は要りません。個人なら税務署に開業届を出すところから始められます。ただしこれは民間の教室として開く場合の話で、学校教育法上の学校・専修学校・各種学校として設置するなら認可の話になります。ただし特定商取引法の特定継続的役務提供に当たり得ます。特定商取引に関する法律施行令の別表第四(第二十四条、第二十五条、第三十条、第三十一条関係)には7つの役務が挙げられていて、そのうち六の項が「電子計算機又はワードプロセッサーの操作に関する知識又は技術の教授」です。学習塾(五の項)と違い、こちらには受験対策や学校の補習という目的の限定も、在学中の児童・生徒・学生という対象者の限定も置かれていません。期間が2月を超え、金額が50,000円を超える契約が要件です。当たる場合、契約前と契約後に渡す書面の記載事項が法律で決まっており、中途解約のときに事業者が請求できる額にも上限が置かれています。役務の提供開始前は15,000円。開始後は、提供済みの役務の対価に加えて請求できる損害賠償等の額が「5万円 又は 契約残額の100分の20に相当する額のいずれか低い額」までです(提供済み分を含めた総額の上限ではありません)。自塾の契約が当たるかどうかの判断は本サイトでは行いません。書面の中身は入塾時に渡す書面のページで扱っています。

残るほうは、在籍と固定費で決まる

「プログラミング教室のオーナーはいくら稼げるか」という数字は、本サイトでは出しません。出せる根拠を持っていないためです。出せるのは計算の形だけです。

月に残る額 = 在籍数 ×(月謝 − 生徒1人あたりの変動費)− 月の固定費

単独で開くと、この式の固定費に家賃が丸ごと乗ります。併設なら乗りません。前章の表と同じ構造がここにも出ます。加盟するなら、ロイヤリティが変動費か固定費かで式のどこに入るかが変わるので、契約書で確認してください。

自分の数字を入れた試算は収支シミュレーターでできます。相場から逆算するのではなく、払える固定費から必要な在籍数を出す順序で使ってください。

教材の更新を誰が持つかで、加盟の損得が決まる

プログラミングには、他の科目と違う事情があります。扱う言語も教材も、数年で入れ替わります。 国語や数学のように、一度作った教材を長く使い回すことができません。

加盟すれば、この更新は本部の仕事になります。逆に自前でやるなら、毎年つくり直す人と時間が要ります。 ロイヤリティは、その更新を外に出す対価だと考えると判断しやすくなります。

  • 加盟の価値が出やすい条件 カリキュラムを作る人が社内にいない。機材の選定と入れ替えを自分で判断したくない。開いてすぐに体裁の整った教室にしたい。この場合、更新の負担を外に出す意味があります。
  • 見送りを検討する条件 すでに集客できていて、教える中身も自分で決めたい。この状態でロイヤリティを払うと、払った分がそのまま利益から減ります。受験科目として扱うなら、教材は情報Ⅰの出題範囲に合わせる必要があり、習い事向けのカリキュラムがそのまま使えるとは限りません。
  • 契約前に確かめること 教材のライセンスが契約終了後も使えるか。機材を本部から買う義務があるか。カリキュラムの更新頻度と、更新時の追加費用。更新を外に出すために加盟するのに、更新のたびに追加で請求される形だと、意図と合いません。

加盟の損得そのものの計算方法と、情報開示書面で確認する項目はフランチャイズのページにまとめています。 本ページでは個別の本部の条件比較は扱いません。

教材の種類が、オンラインでやれるかどうかを決める

教材を選ぶと、同時に授業の形も決まります。画面の中で完結する教材なら、オンラインに乗ります。ブロックを組んで動かす形式のものは、生徒側の端末とインターネットがあれば成立します。

ロボット教材はそうはいきません。実物のキットが生徒の手元に要るので、教室に来てもらうか、貸し出すか、買ってもらうかになります。配送や購入の形にすればオンラインでも運用できますが、在庫と貸出の管理、壊れたときの対応、生徒側の購入負担が新しく乗ります。壊れたときの対応は対面のほうが早く済むので、対面にする理由も強くなります。

前章の費用の表でいえば、ここは物件と機材の行に返ってきます。画面で完結する教材なら物件を持たない選択肢が残り、ロボットを選ぶと在庫と配送か、教室かのどちらかを抱えることになります。オンラインで教える場合の集金や在籍の管理はオンライン塾のページで扱っています。

公的統計に、市場規模も月謝の相場も無い

プログラミング教室の市場規模を示す数字が、いくつも流通しています。事業計画の前提に置く前に、確かめておくことがあります。 プログラミング教室を単独で数えた公的統計は存在しません。

日本標準産業分類にその区分が無いためです。経済センサスでも経済構造実態調査でも、 プログラミング教室は「教養・技能教授業」に入り、音楽教室・書道教室・そろばん教室などと同じ箱で集計されます。 第5章で使った10.4%という数字も、その箱全体の値です。

月謝の相場も同じで、公的統計から取ることができません。 本サイトでは、出所を示せない数字を載せない方針をとっています。相場の代わりに使えるのは、次の順序です。

  • 自分の商圏の児童生徒数から積む 市町村が公表している学校基本調査の数字で、小中高それぞれの人数が分かります。推計値ではなく実数なので、前提として置いても崩れません。
  • 単価は相場でなく固定費から逆算する 月の固定費を、目標とする在籍数で割ると、1人あたりに必要な限界利益が出ます。周辺の相場だけで決めると、家賃や講師料を回収できない単価になることがあります。
  • 近隣の教室の公表価格を自分で見る 商圏内の教室が公開している料金は、推計ではなく実際の価格です。全国の相場をまとめた記事より、近隣の教室が実際に出している料金のほうが参考になります。

固定費から必要な在籍数を出す計算は、収支シミュレーターで試せます。

やめる基準を、始める前に決めておく

開業を扱う記事は、たたむ話をほとんど書きません。プログラミング教室では、撤退の基準を先に決めておく必要があります。 教材と機材に払った分が、やめると戻らないからです。

  • 機材の更新が来る前に判断する パソコンやロボット教材には買い替えの時期があります。次の買い替え費用を出す前に、続けるかを決めてください。更新の時期を最初にカレンダーに置いておくと、判断を先送りしにくくなります。
  • 併設なら、他の講座と比べる 同じ教室の同じ時間帯で、別の講座を開いたときの利益と比べてください。単体で黒字でも、他の講座より低ければ、その講座は、ほかの科目に使えば多く稼げた時間帯と座席を占めています。
  • 受験科目として続くかを、2年で見る 情報Ⅰが受験に必要な生徒がどれだけ来たかを数えます。習い事として来た生徒しかいないなら、既存の塾に併設した利点を使えていません。その場合は併設をやめるか、対象を小学生に絞り直すかの判断になります。

塾そのものを畳む・譲るときの実務は塾を畳むか譲るかのページにあります。

よくあるご質問

プログラミング教室は今から開業しても遅くないですか。
狙う需要によって答えが変わります。需要では、共通テストの情報Ⅰを305,202人が受験しています(令和8年度)。物理145,203人の2.1倍、化学181,584人も上回る規模です。共通必履修科目なので、履修する対象は高校生全体に広がります。ただし共通テストで実際に何人が受験するかは、各大学が課すかどうかにも左右されるため、この人数がそのまま続くとは限りません。一方、小学生向けの習い事としてのプログラミング教室は参入が続いていて、選ばれる理由を作りにくくなっています。小学生向けに単独で開くなら競争は強く、情報Ⅰの対策として既存の塾に足すなら、まだ検討する余地があります。
必修化で需要が増えたと聞きましたが、本当ですか。
学校で触れる子が増えたのは事実です。文部科学省「教育の情報化に関する手引」によると、小学校学習指導要領(平成29年告示)において、令和2年度からプログラミング教育を行うこととしているとされています。ただし、これは習い事として売る理由であって、塾が扱う理由とは別です。塾にとって効くのは、高校に共通必履修科目「情報Ⅰ」が置かれ、共通テストで出題されるようになったほうです。開業を勧める文章の多くは前者だけを根拠にしています。どちらを根拠に事業を組むかで、対象学年も競合も変わります。
教室を新しく借りるのと、いまの塾に足すのとで、何が違いますか。
家賃が二重にかかるかどうかが最も大きな違いです。経済構造実態調査(費用内訳割合)によると、費用総額に占める賃借料(土地・建物)は学習塾で10.5%、習い事の教室が含まれる教養・技能教授業で10.4%です。ほとんど変わりません。習い事だから場所代の比重が軽い、という構造にはなっていません。新しく借りればこの費目が新たに乗り、いまの塾に足す場合は乗りません。ただしこれは費用に占める割合であって、家賃の実額が塾と同じという意味ではありません。加えて、名前を知られている状態と、いまの生徒という母集団を最初から使えます。
中学生向けのプログラミング講座は成り立ちますか。
単独の商材としては難しく、既存の在籍を伸ばす形なら意味があります。文部科学省「教育の情報化に関する手引」によると、中学校では技術・家庭科技術分野において、プログラミングに関する内容を充実(「計測・制御のプログラミング」に加え、「ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミング」を学ぶ)とされています。ただし扱うのは技術・家庭科の中で、国語・社会・数学・理科・外国語のいわゆる5教科ではありません。定期テスト対策としての需要の出方が5教科と違うため、これだけで教室を成り立たせるのは難しくなります。中学で見るべきなのは、いまの塾に中学生が在籍している場合です。その中学生は、高校で情報Ⅰを受ける生徒でもあります。中学生を抱えていない塾や単独開業では、この線は使えません。小学生を習い事として集め直すのと、いまの中学生の在籍を情報Ⅰまで伸ばすのとでは、必要な時間も費用も変わります。
フランチャイズに加盟するべきですか。
自前で教材を更新し続けられないなら、加盟を検討する理由があります。プログラミングは扱う言語も教材も数年で入れ替わるため、更新の負担が他の科目より大きい領域です。加盟すれば更新は本部側の仕事になりますが、その対価としてロイヤリティを払い続けます。加盟するかどうかは、加盟によって増える在籍から得られる利益と、ロイヤリティと追加の固定費を比べて決めます。計算の仕方は当サイトのフランチャイズのページで扱っています。
プログラミング教室の月謝はいくらに設定すればよいですか。
公的統計に、プログラミング教室の月謝を示したものはありません。日本標準産業分類にプログラミング教室という区分が無く、音楽教室や書道教室と同じ「教養・技能教授業」に含まれるためです。本サイトでは、出所を示せない相場の数字を載せない方針をとっています。決め方としては、相場から入るのではなく、目標とする在籍数と月の固定費から必要な単価を逆算してください。当サイトの収支シミュレーターで試算できます。
市場規模が300億円という数字を見ましたが、使えますか。
推計の方法と対象範囲が分からない数字なら、事業計画の売上根拠には使わないほうが安全です。プログラミング教室を単独で数えた公的統計は存在しません。日本標準産業分類に区分が無いためで、経済センサスや経済構造実態調査でも音楽教室や書道教室と同じ区分に混ざります。流通している市場規模の数字は民間の推計で、推計の方法と対象範囲が示されていないものが少なくありません。事業計画の前提に置くなら、自分の商圏の小中高の児童生徒数のように、出所をたどれる数字から積んだほうが安全です。
講師はプログラミングができる人でないと務まりませんか。
習い事用の教材を進行するだけなら、開発経験までは要らない場合があります。教材が手順まで用意されている形なら、指導者に求められるのは進行と質問への一次対応です。ただし情報Ⅰの対策として売るなら、プログラミング以外も教えられる講師が要ります。出題範囲にはネットワークやデータベースの基礎も含まれるためです。習い事として開くのか受験科目として扱うのかで、必要な人材の条件が変わります。

本ページで使用した統計と資料

  • 大学入試センター「共通テスト 受験者数・平均点の推移(本試験)」https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/suii/R3_.html)。平均点は100点満点に換算した点数。情報Ⅰは令和7年度が初回で、令和3〜6年度の表には区分が無い。
  • 文部科学省「教育の情報化に関する手引」第3章 プログラミング教育の推進PDF)。当社がPDFを取得して該当箇所を確認しました。
  • 総務省「経済構造実態調査」事業区分(中分類、一部小分類)別費用内訳割合(統計表ID 0004055483)。学習塾は産業小分類823、教養・技能教授業は824。(産業共通)の費目のみ。費用総額にはほかに「その他の経費」等が含まれ、合計は100%にならない。プログラミング教室だけを取り出した区分は日本標準産業分類に無く、この区分には音楽教室・書道教室・そろばん教室なども含まれる。

本ページの計算は、いずれも上記の一次データから当社が行いました。 プログラミング教室の市場規模と月謝の相場は、公的統計に存在しないため掲載していません。 高等学校学習指導要領の実施年度も、一次のページで確認できなかったため書いていません。