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塾の業態別ガイド|指導方式で収益構造はどう変わるか

同じ「塾」でも、指導方式によって収益のつくり方が変わります。単価、講座の立て方、必要な講師の稼働、新規獲得への依存度。これらは業態ごとに違い、必要な在籍数と固定費の水準を決めます

ここでは政府統計から、方式による構造の違いを数字で示します。業態を選ぶ前に、何が変わるのかを押さえておいてください。

集団指導の教室を後方から見た様子。長机が整列し、前方にホワイトボードがある
※写真はイメージです。特定の教室や事例を示すものではありません。

指導方式で、講座の立て方が変わる

経済産業省・総務省「経済構造実態調査」(2020年)【33学習塾】事業従事者5人以上の部 第8表から、集団指導と個別指導を比べると次のようになります。

指標 集団指導 個別指導
1講座あたり在籍者数 5.43人 1.08人
1事業所あたり年間開設時間 2,216時間 4,579時間
在籍に占める新規の割合 28.1% 35.8%
最も多い受講料帯(1時間あたり) 小学生 千円未満 50.5% 中学生 2千〜5千円 80.2%

1講座あたりの在籍者数は、集団が個別の5倍です。個別指導は単価を高く取れる代わりに、同じ在籍数を教えるのに開くべき講座数が増えます。1事業所あたりの年間開設時間が個別で2.1倍になっているのは、その表れです。この統計に受講料も費用も含まれていないため変動費率そのものは測れませんが、個別指導で変動費率が高くなりやすい背景として説明できます。変動費率は自塾の実績かモデルで別途置いてください。

在籍60人を教えるのに、開く講座はいくつ必要か 1マスが1講座。経済構造実態調査(2020年)第8表の1講座あたり在籍者数から換算 集団指導方式 12講座 個別指導方式 56講座 同じ在籍数でも、個別指導は開く講座が 4.7 倍になります 1事業所あたりの年間開設時間も、個別が集団の2.1倍です。単価の高さはここで相殺されます

読み方 1マスが1講座です。同じ在籍60人でも、集団指導は12講座で足りるのに対し、個別指導は56講座を開くことになります。 講座が増えれば、その分だけ講師のコマと教室の席が要ります。個別指導は1人あたりの単価を高く取れますが、その差はこの講座数の多さで戻っていきます。利益が残るかどうかは、単価ではなく1講座に何人入るかで決まります。

出典: 経済産業省・総務省「経済構造実態調査」(2020年)【33学習塾】事業従事者5人以上の部 第8表(統計表ID 0003450274)。政府統計の総合窓口(e-Stat)のAPIから当社が取得し、講座数への換算は当社で行いました。 1講座あたり在籍者数は在籍者数 ÷ 講座数で、1コマで同時に指導する人数ではありません。事業従事者5人以上の事業所が対象。経営組織別_計。1つの事業所が集団・個別の両方を行う場合があるため、該当事業所数の合計は全体と一致しない。

出典: 経済産業省・総務省「経済構造実態調査」(2020年)【33学習塾】事業従事者5人以上の部 第8表(統計表ID 0003450274)/経済産業省・総務省「経済構造実態調査」(2020年)第5表・第4表。当社が e-Stat のAPIから取得し、1講座あたり等の値は当社で計算しています。事業従事者5人以上の事業所が対象。経営組織別_計。1つの事業所が集団・個別の両方を行う場合があるため、該当事業所数の合計は全体と一致しない。
「1講座あたり在籍者数」は在籍者数 ÷ 講座数で、1コマで同時に指導する人数ではありません。個別指導は生徒ごとに講座を立てるため1に近い値になり、集団指導も科目別に講座が積み上がるため、実際のクラス規模より小さく出ます。
この表で並べた2つの統計は、対象母集団が異なります。相互に割り算したり、時系列の変化として比較したりはしていません。

方式を決めると、毎年の募集量と講師稼働も決まる

業態の選択は、単価だけの話ではありません。上の表の3つの数字は、開校したあとに毎年かかる負荷を決めます。選んだ時点で、その後ずっと必要な募集の量と講師の稼働が決まると考えてください。

募集は、個別のほうが構造的に重い

在籍に占める新規の割合は、集団28.1%に対して個別35.8%です。仮に在籍100人の教室で同じ比率になるとすれば、年間の新規獲得は集団28人、個別36人。同じ在籍数を保つのに、個別は年8人多く集め続ける必要があるという意味になります。

個別指導は単価を高く取れる方式ですが、その単価は募集の手間とセットです。広告費や説明会の回数を集団と同じ前提で計画すると、在籍が積み上がらないまま費用だけが先行します。

講師の確保は、集団のほうが在籍増に耐える

1講座あたりの在籍者数が集団5.43人、個別1.08人ということは、集団は在籍が増えても既存の講座に収容できる余地がある一方、個別は在籍が増えた分だけ講座を足すことになるということです。1事業所あたりの年間開設時間が個別で2.1倍になっているのは、この積み上がりの結果と読めます。

講師を継続的に採用できる見込みが立たないなら、個別指導は在籍が伸びた時点で頭打ちになります。逆に、教える人が自分1人でも回せる規模から始めたいなら、コマ数が読める形で設計できる個別のほうが立ち上げやすい面もあります。どちらが有利かではなく、自分の採用力がどちらの構造に耐えるかで決まります。

在籍100人の例示は、統計の新規比率をそのまま当てはめた当社の計算です。統計に載っている値ではありません。実際の必要獲得数は、退塾のタイミングや学年構成で変わります。また、この統計には費用が含まれていないため、講師人件費率そのものは測れません。ここで述べているのは講座数と開設時間から読める稼働の傾向です。

8つの業態を、4つの軸で並べる

業態は好みで選びがちですが、決まるのは必要な商圏人口と、黒字になる在籍数と、用意する現金です。手元の資金と、その場所にいる子どもの数から、選べる業態は絞られます。

下の表は、当社が業態ごとに置いている想定値です。統計ではありません。各社の公式な募集条件と、自塾の商圏の実数に置き換えて使ってください。「—」は当社がまだ根拠を持っていない欄です。推測で埋めていません。

業態 月謝 開業資金 必要商圏人口 損益分岐
個別指導塾 1.5万円〜3万円 500万円〜1500万円 2万人〜5万人 40〜70人
集団指導塾 2万円〜4万円 1000万円〜3000万円 5万人〜15万人 60〜120人
自立学習型 1万円〜2.5万円 300万円〜1000万円 1.5万人〜4万人 25〜45人
オンライン塾 1万円〜3万円 50万円〜300万円 15〜35人
そろばん教室 0.5万円〜1万円 100万円〜300万円 1万人〜3万人 40〜80人
プログラミング教室 0.8万円〜1.5万円 300万円〜700万円 2万人〜6万人 40〜80人
英会話・英語塾 0.7万円〜1.5万円 300万円〜1000万円 2万人〜6万人 40〜80人
幼児教育教室 1万円〜3万円 300万円〜1000万円 3万人〜8万人 25〜50人
業態は「用意する現金」と「要る商圏の大きさ」で並ぶ(当社の想定値) 開業資金の小さい順。上にあるほど、小さく始められます。統計ではありません 開業資金 必要な商圏人口 そろばん教室 200万円 2万人 プログラミング教室 500万円 4万人 自立学習型 650万円 2.8万人 英会話・英語塾 650万円 4万人 幼児教育教室 650万円 5.5万人 個別指導塾 1000万円 3.5万人 集団指導塾 2000万円 10万人 手元の資金と、通学圏にいる子どもの数。この2つで選べる業態が決まります 業態名がオレンジのものは、記事を公開済みです。数字は各項目の中央値で置いています

読み方 左の帯が用意する開業資金、右の帯が必要な商圏人口です。開業資金の小さい順に並べています。 上にあるほど、少ない現金で・狭い商圏で始められます。地方で開くなら右の帯が短い業態しか選べませんし、自己資金が限られるなら左の帯が短いものに絞られます。月謝の高さや自分の得意分野より、この2つが先に効きます。

当社が業態ごとに置いている想定値です。統計ではありません。各社の公式な募集条件と、自塾の商圏の実数に置き換えてください。 開業資金と商圏人口の両方を持っている業態だけを並べています。値を持っていない業態は、推測で置かずに図から外しました。

この表の使い方

先に見るのは、いちばん右の損益分岐と、右から2番目の商圏人口です。その2つを満たせない業態は、月謝がいくら高くても成立しません。通学圏に何人いるかは通塾率のデータから、自分の数字での試算は収支シミュレーターから確かめられます。

統計で比べられるのは、集団と個別だけ

政府統計が方式として区分しているのは集団指導と個別指導の2つです。自立学習型、オンライン、そろばん、プログラミングは、統計上の区分がありません。この4つについて上の表に置いた値は、公開されている募集条件と当社の実務からの想定です。統計で裏づけられた数字ではないことを承知のうえで使ってください。

逆に言えば、集団と個別については講座数・在籍者数・開設時間まで実数で比べられます。この2つで迷っているなら、上の章の数字がそのまま判断材料になります。

あとから業態を変えるのは、思うより重い

開校してから方式を変える塾はあります。ただし変わるのは指導のやり方だけではありません。席の配置、講師の人数と契約、月謝の水準、そして在籍している家庭への説明が同時に動きます。

月謝を変える場合は契約の条件を変えることになるため、入塾時の書面に何を書いたかが効いてきます。手順は塾の値上げのページで扱っています。集団から個別へ移す場合は、同じ在籍数を教えるのに開く講座が増えるため、講師の確保が先に要ります。

AIを使うかどうかは、業態を決めたあと

個別指導と集団指導では、時間を取られている仕事が違います。集団は教材をつくる時間、個別は授業記録と引き継ぎです。どこに効くかは業態で変わるので、業態を決めてから考える順になります。何を確認してから決めるかは塾のAI活用のページで扱っています。

業態ごとのガイド

収益構造を業態ごとに掘り下げたページです。

今後扱う業態: 集団指導塾/自立学習型/そろばん教室/英会話・英語塾/幼児教育教室。 収益構造の違いを数字で示せる材料が揃った業態から順に公開します。

業態ごとの開業資金・月謝の目安は、各社の公式な募集条件を確認したうえで掲載します。フランチャイズ加盟を検討する場合は、必ず各本部の公式情報と、加盟前に示される条件をご確認ください。

業態を決める前に見ておくもの