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SCHOOL MANAGEMENT SYSTEM

塾管理システムは必要か|入れない判断と、月額を回収できる条件

塾管理システムを調べ始めると、機能の一覧と製品の比較が次々に出てきます。ただ、決めなければならないのはどれを入れるかより先に、そもそも入れるかどうかです。

入れるかどうかを決めるのに要るのは、次の3つです。入れなくてよい条件はどれか。月額を回収できるのは在籍何人からか。人を1人増やすのと比べてどちらが安いか。機能の一覧を何本読んでも、この3つは出てきません。

在籍何人から月額を回収できるか、いま事務にかかっている時間を人件費に置き換えるといくらか。この2つを自塾の数字で計算します。個社製品の比較表は作りません。料金と機能は各社が随時変えるため、当社が実測できない値を並べると公開直後に古くなるからです。

当社はいずれの塾管理システムの提供会社とも販売代理の関係を持っていません。一方で、ご相談の結果として事業者をご紹介する場合に、紹介料などの対価を受け取る可能性があります。判断材料は本ページと同じ計算を優先し、条件が合わない場合は見送りをお勧めします。

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※写真はイメージです。特定の教室や事例を示すものではありません。

SHORT ANSWER

結論から。 判断は月額 ÷ 生徒1人あたりの限界利益から始めます。当社のモデル(限界利益17,500円/月)なら、月額10,000円のシステムは生徒1人分、月額30,000円なら2人分の限界利益に相当します。 この人数を新規で取り戻せるか、あるいは同額以上の人件費や機会損失が減るか。どちらも言えないうちは入れません。

回収の計算は第2章、仕組みに寄せられる業務の切り分けは第3章、人を雇うのとの比較は第4章で扱います。 在籍数と固定費から損益分岐を出す手順は塾経営のページにあります。

1. まず、入れない判断から始める

システムの検討は、たいてい「不便を感じている」ところから始まります。ただし不便であることと、月額を払う価値があることは別です。先に決めるべきは、いま何に時間を取られているのかと、その時間がいくらの価値なのかです。

次の3つのいずれにも当てはまらない場合、導入を急ぐ必要はありません。

  1. 同じ手順の作業が、毎月まとまった時間を取っている 請求書の作成と送付、入退室の記録、保護者への一斉連絡など、判断が要らず手順が決まっている作業です。何時間かかっているかを実際に測ってください。
  2. その作業のせいで、売上に直結する時間が削られている 体験授業の対応、面談、募集の打ち手。管理業務がこれらを圧迫しているなら、削減の価値は人件費だけでは測れません。
  3. 人が増えて、口頭での共有が回らなくなっている 講師が複数になり、誰がどの生徒を見ているかを紙とその場の会話で管理している状態は、記録が残らないぶん引き継ぎで崩れます。

不便の解消と、費用の回収は別の問題です

「あったら便利」は、ほぼすべての製品について成り立ちます。判断に使えるのは便利さではなく、月額に見合う何かが減るか増えるかです。減るもの(人件費・残業・手戻り)と増えるもの(在籍・継続)のどちらかを具体的に言えないなら、その時点では見送りが妥当です。

なお、開業前の段階で最初から導入するかどうかは別の判断になります。開業時は固定費を最小にすることが優先されるため、開業ガイドの資金計画と合わせて考えてください。

2. 月額は生徒何人分の限界利益か

システムの月額は固定費です。固定費が増えると、損益分岐生徒数が上がります。したがって月額を「生徒何人分の限界利益か」に換算すると、判断の単位が揃います。

必要な追加在籍数 = システムの月額 ÷ 生徒1人あたりの月次限界利益

当社のモデルケース(実効単価25,000円 × 変動費率30% を引いた限界利益17,500円)で計算すると、次のようになります。

システムの月額 年額 必要な追加在籍 標準テナント型の損益分岐
5,000円 60,000円 1人 55人 → 55人
10,000円 120,000円 1人 55人 → 55人
20,000円 240,000円 2人 55人 → 56人
30,000円 360,000円 2人 55人 → 56人
50,000円 600,000円 3人 55人 → 58人

限界利益は当社が置いたモデルです。当社が置いたモデルケースであり、業界平均でも統計値でもありません。単価・変動費率とも自塾の実績に置き換えてください。自塾の実効単価と変動費率で計算し直してください。損益分岐生徒数の出し方は塾経営のページで扱っています。

金額だけを見ると月額10,000円は小さく見えますが、在籍1人分の限界利益と言い換えると判断が変わることがあります。在籍20人の教室にとっての1人は在籍の5%です。

そのうえで、回収の道筋は2つしかありません。在籍を増やすか、費用を減らすかです。「便利になる」は、このどちらかに変換できて初めて判断材料になります。

減る費用は、時給に換算してから比べます

月10時間かかっている請求業務がゼロになるとして、その10時間の価値はいくらか。オーナー自身がやっているなら、その時間で体験授業を1件対応できたかもしれません。事務スタッフがやっているなら時給×10時間です。誰の時間が空くのかで、同じ10時間でも価値が変わります。ここを決めないまま「効率化できる」と言っても、月額と比べられません。

減らせる時間は、1か月だけ記録すれば出る

時間を測っていない状態で見積もりを取ると、金額の安さで選ぶことになります。逆に1か月分の実測があれば、製品を絞る基準にも、導入後に効果を確かめる基準にもなります。特別な道具は要らず、次の4項目を書き留めるだけで足ります。

  1. 作業の名前(請求書の作成、入金の消込、欠席連絡の受付、振替の調整、保護者への一斉連絡、といった単位で分ける)
  2. 誰がやったか(オーナー / 事務スタッフ / 講師。ここが人件費の単価と、空く時間の価値を決めます)
  3. かかった時間(分単位で構いません。正確さより、毎回記録することのほうが効きます)
  4. その月の在籍数(在籍が倍になったときに作業も倍になるのかを、あとで確かめるために要ります)

1か月分がたまったら、前章の「手順が決まる」に入る作業だけを合計します。これが仕組みに寄せられる時間の上限です。判断が要る作業の時間は、システムを入れても残るため、この合計には入れません。

測る月は、できれば通常月を選びます。季節講習の月は請求も問い合わせも増えるため、その月だけを見ると多く出ます。逆に、繁忙期の負荷が導入の動機であるなら、通常月と繁忙月の両方を測って差を見てください。塾は入塾と請求が特定の月に集中するため、平均だけを見ると実態から離れます。

記録した時間に、その作業をしている人の時間単価を掛けると、月額と直接比べられる金額になります。オーナー自身の時間単価をいくらに置くかは判断が要りますが、少なくともその時間で体験授業に何件対応できたかを数えると、機会損失の側から見当がつきます。

3. 仕組みに寄せられるのは、手順が決まっている業務だけ

塾の管理業務は、手順が決まっているものその都度の判断が要るものに分かれます。システムが置き換えられるのは前者だけです。ここを分けずに「業務効率化」とまとめると、導入しても人の作業が減りません。

業務 性質 寄せられるか
月謝の請求・入金消込 手順が決まる 寄せられる。金額の計算規則さえ決まっていれば自動化しやすい
入退室の記録・通知 手順が決まる 寄せられる。ただし打刻の運用が定着しないと記録が欠ける
保護者への一斉連絡 手順が決まる 寄せられる。個別の連絡は別で残る
成績・学習履歴の記録 半分 記録は寄せられるが、何を記録するかを決めるのは人の判断
講師のシフト調整 判断が要る 寄せにくい。相性・力量・本人の都合が絡む
保護者面談・退塾の引き止め 判断が要る 寄せられない。記録を残す支援まで

個別指導の場合、ここにコマ管理が加わります。生徒ごとに時間割が違うため、振替と欠席の処理が集団指導より多く発生します。政府統計でも、1事業所あたりの年間講座開設時間は個別指導が4,579時間で、集団指導の2,216時間に対して2.1倍です。開く講座が多いぶん、その管理も増えます。

出典: 経済産業省・総務省「経済構造実態調査」(2020年)【33学習塾】事業従事者5人以上の部 第8表(統計表ID 0003450274)。当社が e-Stat のAPIから取得し、1事業所あたりの値は当社で計算しています。この数字は講座の開設時間であり、管理にかかる時間そのものを測ったものではありません。方式による講座数の違いを示す指標として扱ってください。個別指導の収益構造は個別指導塾のページで扱っています。

先に測るのは「時間」です

上の表で「寄せられる」に入る業務が、いま月に何時間かかっているか。この数字を持たずに製品の比較に進むと、機能の多さで選ぶことになります。1か月だけでよいので、請求・記録・連絡にかかった時間を記録してください。比較の基準はそこから出ます。

4. 手順が決まっている業務の量で、人か仕組みかが分かれる

管理業務が回らなくなったとき、選択肢は「事務スタッフを増やす」か「システムに寄せる」かのどちらかになります。金額だけを並べると人件費のほうが高く見えますが、両者は置き換えられる範囲が違います。

その事務、人に払うか仕組みに払うか(モデル) 時給1,200円・仕組みの月額15,000円と置いた場合 月額 0 月12.5時間で入れ替わる 仕組み(定額) 人(時間に比例) 0時間10時間20時間30時間 測るのは「業務があるか」ではなく「月に何時間かかっているか」です 1週間だけストップウォッチで測れば、自塾の位置が交点のどちら側かが出ます

読み方 横軸は、その事務に月あたり何時間かかっているかです。人に頼めば時間に比例して費用が増え、仕組みは量が増えても月額が変わりません。 この例では月12.5時間を超えると仕組みのほうが安くなります。逆に、それ以下なら入れないほうが安く済みます。 判断に要るのは製品の機能一覧ではなく、いま何時間かかっているかという1つの数字です。

モデルです。統計ではありません。時給1,200円・月額15,000円は形を見せるために置いた値で、相場を示すものではありません。 自塾の実際の時給と、検討している製品の月額に置き換えてください。導入時の初期費用と、乗り換えにかかる手間は別に見る必要があります。

前章の表で「手順が決まる」に入る業務は、システムに寄せると人の作業を減らせる余地があります。「判断が要る」に入る業務は、システムを入れても人が必要です。したがって比較すべきは、月額と人件費ではなく、手順が決まっている業務の量です。減らせるのは作業時間であって、人員そのものが不要になるとは限りません。

観点 事務スタッフを増やす システムに寄せる
対応できる業務 手順が決まるもの・判断が要るもの の両方 手順が決まるものだけ
費用の増え方 時間に比例して増える 在籍数の段階で増えることが多い。時間には比例しない
立ち上がり 採用と教育の期間が要る 初期設定とデータ移行の期間が要る
やめるとき 雇用のため簡単には戻せない 解約はできるが、データの持ち出し可否を先に確認する
属人化 その人が辞めると手順が失われる 手順が記録に残る

費用の増え方の違いは、在籍が伸びる局面で効きます。人件費は業務量に比例して増えますが、システムの月額は在籍数の段階でしか増えないことが多いためです。逆に在籍が減る局面では、月額だけが残ります。解約条件とデータの持ち出し可否を契約前に確認しておく理由がここにあります。

なお、講師の人件費率そのものを経営指標として持つ話は塾経営のページで扱っています。本ページは管理業務に限った比較です。

5. 事業従事者10人前後を境に、IT活用が多数派に変わる

業界のなかでIT活用がどの規模から増えるのかを、政府統計で確かめます。経済構造実態調査(2020年)第3表には、インターネットを活用した指導方法を採用しているかどうかが、事業所の規模別に載っています。自塾の導入判断そのものは、第1章から第4章の手順で行ってください。

インターネットを活用した指導方法の採用率(事業従事者の規模別) 経済構造実態調査(2020年)第3表。事業従事者5人以上が対象で、4人以下の教室は入っていません 50% 5〜9人 47.5% n=12,260 10〜29人 74.2% n=11,313 30〜49人 77% n=1,320 50〜99人 65.2% n=532 100人以上 86.4% n=44 10〜29人を境に、使っている側が多数派に入れ替わります 自塾がどの区分にいるかで、「まだ早い」の意味が変わります

読み方 赤い棒は半数に届いていない区分、青い棒は多数派になっている区分です。10〜29人のところで入れ替わります。 規模が小さいうちは使っていない教室のほうが多く、それ自体は珍しい状態ではありません。ただし規模が上がると逆転するため、人を増やす計画があるなら、増やす前に決めておくほうが移行が軽く済みます。

出典: 経済産業省・総務省「経済構造実態調査」(2020年)【33学習塾】事業従事者5人以上の部 第3表(統計表ID 0003450269)。政府統計の総合窓口(e-Stat)のAPIから当社が取得し、割合は当社で算出しました。 事業従事者5人以上の事業所が対象。「インターネットを活用した指導方法」の採用の有無であり、管理業務のシステム化の有無ではない。事業従事者5人以上が対象のため、個人で運営している教室はこの集計に含まれません。

インターネットを活用した指導方法の採用率(事業従事者規模別) 0% 25% 50% 75% 100% 5〜9人 47.5% 10〜29人 74.2% 30〜49人 77% 50〜99人 65.2% 100人以上 86.4% 単独事業所 33.5% 全体は61.3%。単独事業所(1教室のみを運営)は別軸のため区切って示している

この図の読み方

事業従事者5〜9人の規模では47.5%、10〜29人では74.2%。 5〜9人では採用していない側がわずかに多く、10〜29人では採用している側が多数派に変わります。 境目は10人前後にあります。 1教室のみを運営する単独事業所は33.5%ですが、 これは「単独・本社・支社別」という別の区分のため、上の規模別の数字と直接は比べられません。 2つの区分を並べて倍率を出すことはしていません。

経済産業省・総務省「経済構造実態調査」(2020年)【33学習塾】事業従事者5人以上の部 第3表(統計表ID 0003450269)をもとに、当社が e-Stat のAPIから取得して算出しました。 採用率は「採用あり ÷(採用あり + なし)」で計算しています。
この統計が測っているのは「指導方法にインターネットを使っているか」であり、塾管理システムの導入率ではありません。 オンライン授業・映像授業・デジタル教材の採用を含む一方、管理業務だけをシステム化している事業所は「なし」に入り得ます。 したがって本図から読み取れるのは、事業従事者10人前後を境に採用側が多数派へ変わるという構造までです。 単独事業所は「単独・本社・支社別」という別区分のため、規模別の数字と直接は比べられません。
事業従事者5人以上の事業所が対象。「インターネットを活用した指導方法」の採用の有無であり、管理業務のシステム化の有無ではない。

事業従事者5〜9人の規模では47.5%で、採用していない事業所のほうがわずかに多くなります。10〜29人では74.2%で、採用している側が多数派に変わります。この境目は10人前後にあります。

別の切り口として、1教室のみを運営する単独事業所は33.5%です。ただしこれは「単独・本社・支社別」という事業従事者規模とは異なる区分なので、上の規模別の数字と直接は比べられません。2つの区分を並べて倍率を出すことはしていません。

この統計は指導方法についてのもので、管理システムの導入率ではありません。オンライン授業や映像教材の採用を含む一方、管理業務だけをシステム化している教室は「なし」に入り得ます。したがってここから読み取れるのは、規模によってIT活用の度合いが大きく違うという構造までです。

この統計から管理システムを入れるべきかは決められません。分かるのは、規模が上がるとITを使う場面そのものが増えるという業界の傾向だけです。導入の可否は第1章から第4章の手順、つまり自塾で何時間かかっているかと、月額が生徒何人分かで判断してください。他所が入れているから入れる、という理由では月額を回収できません。

フランチャイズ加盟別では、加盟側のほうが低く出ています

同じ統計で、フランチャイズに加盟している事業所は44.9%、加盟していない事業所は72.3%です。加盟側のほうが低いという結果になっています。「本部が用意した仕組みを使うので個別のネット活用が要らない」という仮説はあり得ますが、統計はその理由を測っていません。他の説明も同じだけあり得ます。差があるという事実までにとどめてください。加盟を検討している場合は、本部が提供するシステムの範囲と別途費用が発生する部分を、加盟前に書面で確認することをお勧めします。加盟の損得計算はフランチャイズのページで扱っています。

6. 製品は、機能の多さではなく運用の重さで絞る

入れると決めたあとの絞り込みです。本サイトでは個社製品の比較表を作りません。料金と機能は各社が随時変えるため、当社が実測できない値を並べると公開直後に古くなり、読者が実際の見積もりと違う前提で計画を立てることになるからです。

代わりに、見積もりを取る前に確認しておく項目を示します。ここが揃っていないと、機能の多さで選ぶことになります。

  1. 月額が何で決まるか 在籍数か、講師数か、教室数か、定額か。在籍が伸びたときにいくらになるかを、いまの月額ではなく目標在籍のときの月額で確認します。
  2. 初期費用とデータ移行の作業量 既存の生徒名簿・請求情報を誰が入力するのか。自分でやるなら、その時間も導入コストです。
  3. 解約時にデータを持ち出せるか 生徒情報と請求履歴を、解約後に使える形式で出力できるか。ここが確認できない製品は、乗り換えの選択肢を失います。
  4. 保護者側と講師側の操作が現場で回るか 管理者の画面が良くても、保護者がアプリを入れられない、講師が打刻を忘れる、といった理由で記録が欠けると、入れた意味がなくなります。導入前に数名で試せるかを聞いてください。
  5. 使わない機能にいくら払うことになるか 第3章で「寄せられる」に入れた業務だけで足りるなら、それ以外の機能は月額を押し上げるだけです。

製品の分類としては、請求と決済に強いもの、入退室と保護者連絡に強いもの、学習記録に強いもの、複数教室の一元管理に強いものがあります。自塾のボトルネックが第3章のどの行にあるかで、見る分類が決まります。入退室管理を単体で検討する場合は、入退室管理のページで認証方式ごとの運用負荷と、打刻を定着させる条件を扱っています。

無料のもので足りる場合もある

無料で使える製品や、表計算ソフトのテンプレートを配布しているところもあります。「無料だから駄目」ということはありません。第3章で寄せたい業務が1つか2つに絞れていて、在籍数が少ないうちは、無料の範囲で足りることがあります。

ただし、無料の範囲で始める場合に先に決めておくことが2つあります。1つはどこまで無料かです。在籍数の上限、機能の制限、保護者側のアプリが有料になるかどうか。無料の条件を超えたときの金額を、始める前に確認しておきます。

もう1つはデータの持ち出しです。無料の製品でも、生徒情報と請求履歴が蓄積されます。有料版や別の製品へ移るときに出力できないと、手で入れ直すことになります。無料であっても、解約時の出力可否は有料製品と同じ基準で確認してください。

表計算ソフトで自作する選択もあります。この場合、月額はかかりませんが、作る時間と、壊れたときに直せる人が自分しかいないという状態が費用になります。第4章の「属人化」の行と同じ問題が、人ではなくファイルに乗り換わるだけになることがあります。

7. 季節講習の直前と新年度の募集期には切り替えない

製品が決まったあとに残るのが、いつ切り替えるかです。塾は入塾と請求が特定の月に集中するため、切り替える月を間違えると、繁忙とデータ移行が重なります。

避けたいのは、季節講習の直前と、新年度の募集が動いている時期です。この時期は請求の内容が通常月と変わり、問い合わせも増えます。そこへ操作に慣れていないシステムが重なると、記録の欠落や請求の誤りが起きやすくなります。請求の誤りは、金額の問題以上に保護者の信頼に影響します。

逆に落ち着いている月を選べば、旧来のやり方と並行して動かしながら、記録が合っているかを確かめられます。切り替えの前後で請求額が一致するかを1か月だけ突き合わせる余裕があるかどうかで、初動の安心感がかなり変わります。

時期 切り替えに向くか
季節講習の直前・期間中 向かない。請求の内容が通常月と変わり、問い合わせも増える
新年度の募集期 向かない。新規の登録が集中し、操作に慣れる前に件数が積み上がる
講習と講習のあいだの通常月 向く。並行運用して記録の一致を確かめる余裕がある
年度の切り替わり直後 条件つきで向く。学年の更新が済んだあとなら、名簿の移行が1回で済む

季節講習に前受金を受け取っている場合は、切り替えのときに受け取り済みで未消化の分をどう扱うかを先に決めます。旧来の帳簿と新しいシステムで残高の考え方が違うと、突き合わせができなくなります。季節講習と資金繰りの関係は塾経営のページで扱っています。

8. 導入してつまずく型

入れたのに効果が出ない場合、原因は製品よりも運用側にあることが多くなります。

  1. 時間を測らずに入れた 導入前に何時間かかっていたかを記録していないため、減ったかどうかを確かめられません。効果を言えない支出は、次の更新のときに判断ができなくなります。
  2. 紙の運用が並行して残った システムに入れつつ、これまでの帳簿も続ける状態です。作業が二重になり、導入前より時間が増えます。切り替える日を決めて、片方をやめる必要があります。
  3. 講師と保護者への周知を後回しにした 打刻されない、アプリを見てもらえない。記録が欠けると、その機能は無いのと同じになります。運用が定着するまでの期間を、導入計画に入れておきます。
  4. 判断が要る業務まで置き換えようとした 面談や引き止めをシステムで代替しようとすると、記録は増えても対応の質は上がりません。第3章の切り分けに戻ってください。
  5. 在籍が減る局面で解約条件を確認していなかった 最低利用期間や、解約後のデータ出力の可否です。伸びている前提だけで契約すると、縮む局面で身動きが取れなくなります。

効果は、導入前後の3か月を並べて確かめます

退塾率が下がった、事務時間が減った、といった変化は、導入前3か月と導入後3か月を並べて初めて言えます。当社は、入退室通知が退塾率を下げるという実測を持っていません。そう説明されることはありますが、効果があるとは書きません。自塾で測ってください。退塾率の測り方と、必要な新規入塾数の計算は塾経営のページにあります。在籍60人で月次退塾率が3%なら年間22人、5%なら年間36人の新規が必要になる、という規模感です。

固定費にシステムの月額を足したときに損益分岐生徒数がどう動くかは、収支シミュレーターの固定費欄に加えると確かめられます。

9. よくあるご質問

塾管理システムは入れたほうがよいですか。
在籍数と、いま誰が管理業務をしているかで変わります。判断の順序は「月額 ÷ 生徒1人あたりの限界利益=何人分か」を先に出し、その人数を新規で取り戻せるか、あるいは同額以上の人件費や機会損失が減るかを見ることです。当社のモデル(限界利益17,500円/月)だと、月額10,000円のシステムは生徒1人分、月額30,000円なら2人分の限界利益に相当します。オーナー1人で在籍が少ない段階では、この人数を取り戻せないことがあります。
塾管理システムの費用相場はいくらですか。
本サイトでは相場の金額を出していません。料金を公開していない製品が多く、公開されていても在籍数や機能で段階的に変わるためです。確認できない数字を相場として書くと、読者が実際の見積もりと違う前提で計画を立てることになります。検討している製品の公式料金ページと見積もりの実数を、本ページの計算式に当てはめてください。
小規模な塾でもシステムは必要ですか。
必要かどうかは規模ではなく、管理業務が誰の時間を奪っているかで決まります。ただし規模によってIT活用の度合いが違うことは統計で確認できます。経済構造実態調査(2020年)第3表によると、インターネットを活用した指導方法の採用率は事業従事者10〜29人で74.2%、1教室のみを運営する単独事業所では33.5%です。なおこの統計は指導方法についてのもので、管理システムの導入率ではありません。規模が上がるとITを使う場面が増えるという業界の傾向として読んでください。導入の可否は自塾の業務時間と月額で判断します。
人を雇うのとシステムを入れるのはどちらが安いですか。
減らしたい業務が「毎月決まった手順で発生するもの」なのか「その都度判断が要るもの」なのかで分かれます。請求・入退室の記録・保護者への一斉連絡は手順が決まっているためシステムが有利になりやすく、面談や講師のシフト調整は判断が要るため人が要ります。手順が決まっている業務だけを切り出して、それに月何時間かかっているかを先に測ってください。時間を測らずに比較すると、どちらが安いかは出せません。
入退室管理は退塾率に効きますか。
効くかどうかを保証できる根拠は持っていません。保護者への通知が安心につながるという説明は理解できますが、当社は退塾率が下がったという実測を持っていないため、効果があるとは書きません。導入する場合は、導入前の3か月と導入後の3か月で自塾の退塾率を並べて確かめてください。測っていない改善は、あったかどうかも分かりません。
フランチャイズに加盟していればシステムは不要ですか。
本部が提供する範囲によります。統計では、インターネットを活用した指導方法の採用率はフランチャイズに加盟している事業所で44.9%、加盟していない事業所で72.3%と、加盟側のほうが低く出ています。ただしこの統計は理由を測っていないため、「本部の仕組みがあるから個別に要らない」と断定はできません。加盟を検討している場合は、本部が提供するシステムの範囲と、別途費用が発生する部分を、加盟前に書面で確認してください。

本ページで参照した統計

  • 経済産業省・総務省「経済構造実態調査」(2020年)【33学習塾】事業従事者5人以上の部 第3表(統計表ID 0003450269)— インターネットを活用した指導方法の採用の有無
  • 経済産業省・総務省「経済構造実態調査」(2020年)【33学習塾】事業従事者5人以上の部 第8表(統計表ID 0003450274)— 1事業所あたり年間講座開設時間

本ページで参照した統計は調査年次も対象母集団も異なります。相互に割り算したり、時系列の変化として比較したりはしていません。本ページの限界利益・損益分岐生徒数は、当社が置いた前提にもとづくモデルケースであり、業界平均や特定の製品の条件ではありません。効果を保証するものでもありません。統計値は全国の集計であり、個々の教室の実態を示すものではありません。契約内容の解釈については、弁護士などの専門家にご確認ください。

当社の立場について。当社はいずれの塾管理システムの提供会社とも販売代理の関係を持っていません。一方で、ご相談の結果として事業者をご紹介する場合に、紹介料・広告料・成果報酬といった対価を先方から受け取る可能性があります。判断材料は本ページと同じ計算を優先し、条件が合わない場合は見送りをお勧めします。