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ONLINE TUTORING

オンライン塾の開業|教室をやめて消える費用は1割強という話

教室を借りずに塾を始められる。初期費用が小さく、商圏は全国に広がる。そう聞いて、オンラインという形を検討している段階だと思います。

初期費用が小さいのは事実です。ただ、毎月の費用も同じだけ小さくなるかは別の話で、ここを確かめずに始めると、想定していた身軽さが手に入りません。学習塾の費用のうち、教室に紐づいているのは何割なのか。政府統計に答えがあります。

費用内訳と、業界がこの6年でどちらへ動いたか。この2つを一次データで置いたうえで、オンラインが向く条件と向かない条件を分けます。政令上どの項に当たるかが変わり得る点も扱います。

夕暮れの机に開いたノートパソコン。画面には何も映っていない。手前にノートとペン、脇に卓上ライトとウェブカメラが置かれている
※写真はイメージです。特定の教室や事例を示すものではありません。

SHORT ANSWER

結論から。 経済構造実態調査(費用内訳割合)で学習塾の費用内訳を見ると、教室に紐づく費目は賃借料(土地・建物)10.5%と水道光熱費1.4%の 合わせて11.9%です。 給与総額37.3%と広告宣伝費8.1%は、教室をやめても残ります。 教室をやめて身軽になる量は、費用全体の1割強です。 商圏が全国になるぶん、広告費は増えやすくなります。

費用の内訳は第1章、家賃が何を買っているのかは第2章、業界が実際にどう動いたかは第3章で扱います。 開業手続きの全体像は開業ガイド、 運営中の損益は塾経営のページにあります。

教室をやめても、消える費用は1割強しかない

オンラインを勧める文章は、ほぼ必ず初期費用の小ささから始まります。テナントを借りない、内装工事をしない、机と椅子を買わない。そのとおりで、開業時に用意する額は教室型よりはるかに小さくなります。

問題は、そこから「だから低リスク」へ飛ぶところです。事業が続くかどうかを決めるのは、開業時に一度払う額ではなく、毎月出ていく額のほうです。では毎月の費用のうち、教室に紐づいているのはどれくらいなのか。

教室をやめたとき、費用のどれが小さくなりどれが残るか(2025年・学習塾) 経済構造実態調査(費用内訳割合)。費用総額に占める割合 小さくなる 教室に紐づく 10.5% 計 11.9% 残る 教室と無関係 37.3% 8.1% 計 61.3% 小さくなる: 賃借料(土地・建物) 10.5%/水道光熱費 1.4% 残る: 給与総額 37.3%/広告宣伝費 8.1%/外注費 5.7%/減価償却費 3.7% 福利厚生費 2.5%/消耗品費 1.7%/旅費・交通費 1.1%/通信費 0.9%/賃借料(情報通信機器) 0.3% 教室をやめて小さくできるのは11.9%。給与と広告だけで45.4%が残ります

読み方 上の帯が、教室を持たなければ小さくできる費目です。賃借料(土地・建物)と水道光熱費で合わせて11.9%。 下の帯が、オンラインにしても残る費目です。給与総額だけで37.3%、広告宣伝費が8.1%あります。 教室をやめることで身軽になるのは事実ですが、身軽になる量は費用全体の1割強です。しかもこの1割強がまるごと消えるとは限りません。自宅で運営すれば家賃と電気代の一部は按分で残ります。 残りの費目は形を変えずに残り、広告宣伝費にいたっては商圏が広がるぶん増えやすくなります。

出典: 総務省「経済構造実態調査」事業区分(中分類、一部小分類)別費用内訳割合(統計表ID 0004055483)。政府統計の総合窓口(e-Stat)のAPIから当社が取得し、2群への振り分けと合計は当社で行いました。 (産業共通)の費目のみを掲載している。費用総額にはこのほか「その他の経費」等が含まれ、合計は100%にならない。差分が利益になるわけではない。 この調査は既存の学習塾を対象にしたもので、オンライン専業の事業者だけを取り出した内訳ではありません。

教室をやめれば小さくできるのは、賃借料(土地・建物)10.5%と水道光熱費1.4%です。合わせて11.9%。 一方で給与総額37.3%と広告宣伝費8.1%は、授業を画面越しにしても形を変えずに残ります。 教室を持たないことで軽くなるのは、費用全体の1割強です。 しかもこの1割強がまるごと消えるとは限りません。自宅で運営するなら家賃と電気代の一部は按分で残りますし、配信のための場所を別に用意すればそこに費用が立ちます(自宅開業のページで扱っています)。

この数字を見てから「低リスク」という言葉に戻ると、意味が変わります。低くなっているのは開業時の一時的な負担で、毎月の負担ではありません。しかも次の章で見るとおり、広告宣伝費のほうはむしろ増えやすくなります。

この統計の読み方

掲載しているのは(産業共通)の費目だけです。費用総額にはこのほか「その他の経費」等が含まれるため、合計は100%になりません。 差分が利益になるわけではないので、100%から引き算して利益率を出さないでください。 また、この調査は既存の学習塾を対象にしたもので、オンライン専業の事業者だけを取り出した数字ではありません。

家賃は削れるコストではなく、商圏を買う投資でもある

オンラインの利点として、ほぼすべての解説が「商圏が全国に広がる」を挙げます。地方にいても都市部の生徒を取れる、対象人口の制約がなくなる、という説明です。

ここは立ち止まるところです。小さい商圏で高いシェアを取るのが、利益率の高い事業モデルの基本形です。 商圏を広げる打ち手は、大きい商圏で低いシェアを取る位置へ自分から移動することにあたります。対象人口は増えますが、そのなかでの存在感は薄まります。

薄まると何が起きるかは、集客の形に出ます。

同じ94人を、狭い商圏で集めるか、全国から集めるか 1点が生徒1人。左右とも94人で、1事業所あたりの受講生数(2021年・94.3人)に合わせている。枠の広さが商圏 教室型 商圏は半径数km 同じ学校に何人もいる 紹介が次の1人を連れてくる オンライン 商圏は全国 隣に同じ塾の生徒がいない 新規を広告に頼る比率が上がる 枠が広がっても、集める人数は同じ94人です。変わるのは、次の1人がどこから来るか

読み方 左右どちらも94人で、これは全国の1事業所あたりの受講生数と同じ人数です。 違うのは商圏の広さと、そこでの散らばり方です。紹介や口コミは、同じ学校・同じ地域に何人いるかで起きます。 左では3人目が4人目を連れてきますが、右では94人が全国に散っているため、隣に同じ塾の生徒がいません。 兄弟や友人からの紹介は右でも起こり得ますが、同じ学校・同じ地域という経路からの紹介は起きにくくなります。 教室型が家賃を払っているのは場所そのものではなく、この密度に対してです。 家賃を消すと、密度から来ていた集客も一緒に細ります。

人数の出典: 総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査」産業別集計(サービス関連産業に関する集計)(統計表ID 0004003273)。1事業所あたり受講生数 94.3人は、受講生数 1,778,072人 ÷ 事業所数 18,850 で当社が算出しました。 1事業所が持つ受講生は全国の 0.0053% にあたります。 点の配置は仕組みを説明するための模式で、実在の生徒の所在地を示すものではありません。 紹介の起きやすさの違いは集客の構造から導いた見立てで、統計で測ったものではありません。

令和3年経済センサス‐活動調査によると、学習塾は全国に18,850事業所あり、受講生は1,778,072人です。 割ると1事業所あたり94.3人。この94人は、全国から見れば0.0053%にすぎません。

教室型は、この94人を半径数kmのなかで集めています。だから同じ中学校に何人も通っている状態になり、そこから次の1人が紹介で入ってきます。 オンラインで同じ94人を全国から集めると、隣に自塾の生徒がいません。兄弟や友人からの紹介は起こり得ますが、同じ学校・同じ地域という経路からの紹介は起きにくくなります。

家賃を払っているのは、場所そのものに対してだけではありません。その地域で名前が知られている状態、つまり密度に対して払っています。 家賃を消すと、密度から生まれていた集客も一緒に細ります。 細った分は広告で埋めることになります。第1章で見た広告宣伝費8.1%は教室型を含む業界全体の値で、オンライン専業だけを取り出した統計は存在しません。 それでも、紹介が起きにくくなれば、新規の獲得を広告に頼る比率は上がります。これは統計で測った事実ではなく、集客の構造から導いた見立てです。自分の計画では、実際の獲得単価を置いて確かめてください。

家賃と広告費には、もうひとつ違いがあります。家賃を払い続けた教室は地域での認知が積み上がり、やめない限り効き続けます。 広告にも指名検索が増えるといった残る効果はありますが、止めれば新規の流入は細ります。 同じ額を出すとしても、払い続けた分が場所に残るのか、出し続けて初めて効くのかで、数年後の姿が変わります。

オンラインへの移行が進んだ形跡は、費用に出ていない

2020年に、塾のオンライン対応は一気に進みました。休校で否応なく画面越しの授業になった教室が多く、その年の採用率は統計にはっきり出ています。 ここから「業界はオンラインへ移行しつつある」という話が出てきます。確かめる手がかりのひとつが、費用に占める賃借料です。 教室からオンラインへ移る動きが業界規模で起きていれば、この割合は下がる方向に動くはずです。

オンラインは一気に増えた。費用に占める家賃の割合は落ちていない 左軸=費用に占める賃借料(土地・建物)/右軸=インターネットを活用した指導方法の採用率 0% 4% 8% 12% 16% 0%50%100% 201920202022202320242025 2021年は表が無い 27.9% 42.8% ネット活用率 (2020年が最終観測点) 12.9 12.8 11.2 9.4 11.2 10.5 賃借料(土地・建物) 採用率が14.9ポイント上がった一方、賃借料は6年で2.4ポイントしか下がっていません

読み方 オレンジが、指導にインターネットを使う事業所の割合です。2019年の27.9%から2020年に42.8%へ、1年で大きく上がりました。 紺が、費用に占める賃借料(土地・建物)です。教室からオンラインへ移る動きが業界規模で起きていれば、この線は下がる方向に動くはずでした。 実際には12.9%から10.5%まで、6年で2.4ポイントです。 移行が進んだ形跡が、費用の側に出ていません。 ただし賃借料は割合なので、教室を持ち続けているからなのか、賃料そのものが上がったからなのかまでは、この数字では分けられません。 いずれにしても、「対面はいずれ減る」を前提に置いた計画は、確認できていない前提の上に立つことになります。

賃借料の出典: 総務省「経済構造実態調査」事業区分(中分類、一部小分類)別費用内訳割合(統計表ID 0003414957/0004055483 ほか)。 ネット活用率の出典: 総務省「経済構造実態調査(乙調査)」【33学習塾】全規模の部 第4表(統計表ID 0003448907/0003450266)。いずれも e-Stat のAPIから当社が取得しました。 2つは別の調査票で、対象事業所も同一ではありません。片方がもう片方の原因であることを示すものではなく、同じ期間に何が起きたかを並べたものです。 2021年は賃借料の表が存在せず、ネット活用率はこの設問が2020年で終わっているため、以降の推移は分かりません。 賃借料は費用総額に占める割合であって、教室の数や面積を測ったものではありません。

指導にインターネットを使う事業所の割合は、2019年の27.9%から2020年に42.8%へ上がりました。1年で14.9ポイントです。 一方、費用に占める賃借料(土地・建物)は2019年の12.9%から2025年の10.5%。6年で2.4ポイントしか動いていません。

ここから言えるのは、「業界が教室からオンラインへ移りつつある」という前提は、費用の側からは確認できないということです。 賃借料は費用総額に占める割合なので、下がらない理由はいくつも考えられます。教室を持ち続けているからかもしれませんし、賃料そのものが上がったからかもしれません。 どれが効いているかはこの統計では分けられません。分かるのは、移行が起きた証拠がここに出ていないということです。

オンラインを検討しているなら、これは無視できない点です。移行が進んでいることを前提に「対面はいずれ減る」と置いて計画を立てると、確認できていない前提の上に数字を積むことになります。 少なくとも2020年の時点では、教室を持ちながらオンラインも使える事業者が42.8%まで増えていました。 オンラインだけで始めると、その事業者たちの一部分と同じ土俵に立つことになります。

2つの調査を並べていること

賃借料とネット活用率は別々の調査票から取っています。対象事業所も同一ではありません。 片方がもう片方の原因であることを示すものではなく、同じ期間に何が起きたかを並べたものです。 ネット活用率の設問は2020年が最終観測点で、2021年以降の値は存在しません。2021年以降にオンライン対応がどう動いたかは、この統計からは分かりません。 賃借料も費用総額に占める割合であって、教室の数や面積を測ったものではありません。

小さい事業者ほど、オンラインを採用していない

オンラインは、資金の少ない個人にこそ向いている。そう書かれることが多い論点です。統計は逆の分布を示しています。

インターネットを活用した指導方法の採用率(2020年・経済構造実態調査(乙調査)全規模の部)
区分 採用率 採用あり 採用なし
事業従事者 4人以下 25.3% 6,782 20,010
事業従事者 5〜9人 48% 5,868 6,360
事業従事者 10〜29人 73.9% 8,282 2,920
事業従事者 30〜49人 77.6% 1,034 299
単独事業所 24.6% 8,054 24,743
支社 77% 13,134 3,914

事業従事者4人以下の事業所で採用していたのは25.3%、10〜29人では73.9%です。 単独事業所は24.6%、支社は77%。小さいほど、単独であるほど採用していません。

第2章の話と重ねると理由が見えます。オンラインで授業をすること自体は難しくありませんが、見つけてもらう手段を用意できるかどうかは規模に依存します。 人手のある事業者は動画や記事を出し続けられ、予算のある事業者は広告を出し続けられます。個人には、そのどちらも簡単ではありません。

ここには限界もあります。この統計が捉えているのは既存事業所の採用状況で、オンライン専業で新しく始めた人は含まれていません。 「小さいところは向いていない」と断定できるデータではなく、「既存の小さい事業所はオンラインを選んでいない」までが読み取れる範囲です。

政令上どの項に当たるかは、教室型と同じとは限らない

教室を持たない形にすると、特定商取引法の枠から外れると考えている方がいます。逆です。 消費者庁「特定継続的役務提供」Q&Aの「家庭教師」の項は、ファックスやテレビ電話によって提供されるいわゆる通信教育も、入学試験や学校教育の補習のための学力の教授にあたれば「家庭教師」に該当する。学習塾と家庭教師は、役務提供事業者が用意した場所で提供するかどうかで分かれるとしています。

規制の外に出るのではなく、当てはまる項が変わり得ます。そして、変わった先で金額が変わります。

政令が2つを分けているのは、場所と対象者 特定商取引に関する法律施行令 別表第四(第二十四条、第二十五条、第三十条、第三十一条関係) 入学試験に備えるため、または学校教育の補習のための学力の教授 期間が2月を超え、金額が50,000円を超えるもの 条件1 授業を受ける場所は、事業者が用意した場所か はい いいえ 五の項「学習塾」 教室に通わせる形。対象者の限定がある 中途解約のとき請求できる上限 20,000円 又は1月分の対価の低い方 開始前に解除されたとき 11,000円 条件2 在学中の児童・生徒・学生が対象であること 四の項「家庭教師」 自宅で受けさせる形。対象者の限定は無い 中途解約のとき請求できる上限 50,000円 又は1月分の対価の低い方 開始前に解除されたとき 20,000円 対象者の限定は置かれていない 当てはまる項が変われば、精算できる上限も変わります

読み方 政令は学習塾と家庭教師を、場所と対象者の2つで分けています。 場所は、五の項が「役務提供事業者の事業所その他の役務提供事業者が当該役務提供のために用意する場所において提供されるものに限る」、四の項が「五の項に規定する場所以外の場所において提供されるものに限る」。 対象者は、五の項が「学校教育法第一条に規定する学校(幼稚園及び大学を除く)の児童、生徒又は学生を対象としたものに限る」で、四の項にはこの限定がありません。 教室に通わせず自宅で受けさせる形は四の項に当たり得ますが、オンラインであることだけで決まるわけではありません。 当てはまる項が変われば、中途解約のときに請求できる上限が20,000円と50,000円で変わります。 ただしどちらも「政令の額 又は 1月分の対価のいずれか低い額」なので、効いてくるかどうかは月謝の水準しだいです。 月謝が20,000円以下なら両方とも月謝額で同じ。20,000円を超え50,000円以下なら五の項は20,000円で頭打ちで、四の項は1月分まで請求できます。 50,000円を超えると四の項も50,000円で頭打ちです。 規制が緩くなるのではなく、当てはまる項が違うということです。

出典: 特定商取引に関する法律施行令(351CO0000000295)別表第四(第二十四条、第二十五条、第三十条、第三十一条関係)。e-Gov 法令検索のAPIから当社が現行条文を取得しました。 入学試験は、学校教育法第一条の学校(幼稚園及び小学校を除く)に加えて、専修学校と各種学校の入学者選抜も含む(義務教育学校は後期課程に係るものに限る)。学校教育の補習は、幼稚園と大学における教育を含まない。この2つの定義は四の項に置かれ、五の項も同じものを使う。本サイトは、自塾の運営が別表第四のどの項に当たるかの判断を行いません。どの項に当たるかは、場所だけでなく、対象者・役務の内容・契約期間・契約金額の総額を合わせて見ることになります。要件の所在を示すところまでとします。判断が分かれる形(対面とオンラインの併用、在学していない相手への指導など)は、専門家または消費者庁の窓口にご確認ください。

特定商取引に関する法律施行令別表第四(第二十四条、第二十五条、第三十条、第三十一条関係)は、学習塾と家庭教師を場所と対象者の2つで分けています。 場所は、五の項が「役務提供事業者の事業所その他の役務提供事業者が当該役務提供のために用意する場所において提供されるものに限る」、四の項が「五の項に規定する場所以外の場所において提供されるものに限る」。 対象者は、五の項が「学校教育法第一条に規定する学校(幼稚園及び大学を除く)の児童、生徒又は学生を対象としたものに限る」で、四の項にはこの限定がありません。 たとえば浪人生だけを対象にした指導は、教室で行っていても五の項の対象者に当たりません。 オンラインであることだけで項が決まるわけではないということです。

それでも、五の項と四の項のどちらに当たるかで金額は変わります。中途解約のときに請求できる上限が20,000と50,000、 役務の提供前に解除されたときの上限が11,000と20,000です。 ただしどちらも「政令の額 又は 1月分の対価のいずれか低い額」なので、効いてくるかどうかは月謝の水準で変わります。 中途解約のときに請求できる上限は「政令の額 又は 契約における1月分の役務の対価に相当する額 のいずれか低い額」。月謝が2万円以下なら両方とも月謝額で同じになり、2万円を超え5万円以下なら五の項は2万円で頭打ち・四の項は1月分まで、5万円を超えると四の項も5万円で頭打ちになるという関係です。 差が出るのは月謝が20,000を超える帯です。教室型では20,000で頭打ちになる一方、四の項なら1月分まで請求できます。ただし月謝が50,000を超えると、四の項も50,000で頭打ちになります。

有利に働く方向の違いですが、把握しないまま契約書を作ると、逆に自分が困ります。教室型の雛形をそのまま使うと、自分に認められている範囲より低い額で精算する契約になります。 どちらの項に当たるかを確かめてから、書面を作ってください。書面に何を書くかは入塾時に渡す書面のページで扱っています。

判断はしません

入学試験は、学校教育法第一条の学校(幼稚園及び小学校を除く)に加えて、専修学校と各種学校の入学者選抜も含む(義務教育学校は後期課程に係るものに限る)。学校教育の補習は、幼稚園と大学における教育を含まない。この2つの定義は四の項に置かれ、五の項も同じものを使う。本サイトは、自塾の運営が別表第四のどの項に当たるかの判断を行いません。どの項に当たるかは、場所だけでなく、対象者・役務の内容・契約期間・契約金額の総額を合わせて見ることになります。要件の所在を示すところまでとします。 対面とオンラインを併用する形、生徒の自宅ではなく自習室のような場所を用意する形、在学していない相手を対象にする形など、判断が分かれるものがあります。 自塾がどちらに当たるかは、専門家または消費者庁の窓口にご確認ください。

損益分岐は、置き方を変えないと実態からずれる

損益分岐生徒数の計算式は、教室型もオンラインも同じです。月の固定費を、生徒1人あたりの限界利益で割ります。 家賃が無いぶん固定費が小さくなるので、必要な生徒数も少なくなる。ここまでは正しく、オンラインを勧める文章もそこで止まります。

ずれるのは、広告費を固定費と変動費のどちらに入れるかです。

教室型では、広告を止めても在籍がすぐには減りません。地域での認知と紹介があるからです。だから広告費を変動費として扱っても、計算は大きく崩れません。 オンラインでは、第2章で見たとおり地域からの紹介が起きにくくなります。広告を止めれば新規の流入が細り、退塾のぶんだけ在籍が減っていきます。 止めれば在籍が減る費用は、変動費ではなく固定費として扱うことになります。

損益分岐生徒数を出すときの、費用の置き方の違い
費目 教室型 オンライン
家賃・光熱費 固定費 自宅なら按分。小さいが残る
広告費 変動費として扱える 固定費に入れる
授業システム・通信 小さい 固定費
講師人件費 変動費 変動費

広告費を固定費に入れて計算し直すと、家賃が無いことによる損益分岐生徒数の低さは、見た目ほど大きくありません。 家賃が消えた分の一部が広告費に置き換わっているだけ、という形になることもあります。

自分の数字で確かめるなら、収支シミュレーターに固定費として広告費を入れてください。 入れた場合と入れない場合で、必要な生徒数がどれだけ変わるかを見ておくと、判断の材料になります。 損益分岐の考え方そのものは塾経営のページで扱っています。

向く条件と、向かない条件

ここまでは、オンラインで不利になりやすい点を数字で見てきました。ただし向かないと決まったわけではありません。 不利なのは「近所に通える塾がある層を、オンラインで取りに行く」形です。この場合、相手には地域からの紹介があり、こちらにはありません。

裏返すと、向く条件も決まります。

  • 近くに選択肢が無い層を対象にする 通える範囲に塾が無い、あっても志望校に対応していない。この層にとっては、通塾時間ではなく選択肢の有無が問題です。ここでは商圏の広さが本当に利点になります。
  • 対面の塾より詳しい領域がある 特定の入試、特定の科目、特定の資格。近所の塾では扱えない範囲を持っているなら、全国に少しずついる生徒を集めるという広げ方が成立します。逆に、どの塾でも扱う範囲で戦うと、全国の同業者と比べられます。
  • すでに見つけてもらう手段を持っている 指名で相談が来る状態が先にあるなら、オンラインはそれを届ける手段になります。開業してから発信を始める順序だと、届くまでの期間を無収入で耐えることになります。
  • 既にある教室に足す 休んだ生徒の振替、通えない距離の生徒への対応、悪天候時の代替。第2章で見た地域の密度を保ったまま、届く範囲だけを広げられます。第3章で見たとおり、この形は統計と矛盾しません。

逆に、次の形は見送りを検討してください。

  • 通塾時間ゼロを主な訴求にする 近所に通える塾がある層にとって、移動が不要なことは選ぶ理由になりません。通塾時間だけでは違いを出しにくく、結局は月謝で比べられます。
  • 初期費用の小ささを理由に選ぶ 第1章のとおり、小さくなるのは開業時の負担で、毎月の負担は11.9%しか軽くなりません。初期費用が小さいことは、毎月の支出が軽いことを意味しません。
  • 教材やシステムの提供元が示す成功率を根拠にする オンライン化を勧める側は、教材やシステムが売れて収益になる立場です。初期費用の小ささを売り文句にできるのは、その初期費用を受け取らない側だけです。示された数値は、母数と算定期間を確かめてから使ってください。

やめる基準を、始める前に決めておく

固定費が小さいので、うまくいっていなくても続けられてしまいます。 教室型なら家賃が資金を削るため、いずれ判断を迫られる時期が来ます。オンラインではその圧力が働きにくくなります。

資金の減りが小さいかわりに、成果の出ない期間が長引きます。だから、始める前に基準を決めておく必要があります。具体的な数字は事業計画によりますが、決めておくのは在籍・獲得単価・紹介の3点です。

  • 在籍数の期限を切る いつまでに何人、を先に書いておきます。広告を出さずに何人来たかを分けて数えてください。広告経由だけで積み上がっている状態だと、広告を止めたときに在籍を保てる根拠がありません。
  • 1人を獲得するのにかかった額を追う 広告費を新規入塾者数で割った額が、月謝の何か月分にあたるか。この月数が在籍期間を超えたら、増やすほど損をしています。オンラインは在籍期間が読みにくいので、早めに測ってください。
  • 紹介が起きたかを見る 既存の生徒から次の生徒が来たかどうかは、集客が広告だけに頼らなくなった合図です。1年たっても紹介が1件も起きていないなら、新規の獲得を広告に頼る状態から抜けられていません。

畳むときや譲るときの実務は塾を畳むか譲るかのページにあります。 オンラインは設備の処分が少ないぶん撤退の実費は小さくなりますが、前受金の返金と、契約書に書いた精算の条件は教室型と同じように残ります。

よくあるご質問

オンライン塾は教室型より低リスクで始められますか。
初期にかかる額は小さくなりますが、毎月の費用が同じだけ小さくなるわけではありません。経済構造実態調査(費用内訳割合)で学習塾の費用内訳を見ると、教室に紐づく費目は賃借料(土地・建物)10.5%と水道光熱費1.4%で、合わせて11.9%です。給与総額37.3%と広告宣伝費8.1%はオンラインにしても残ります。また商圏が全国に広がるぶん、広告費は増えやすくなります。オンライン専業だけを取り出した統計は無いため、これは集客の構造からの見立てです。始めるときの負担は軽く、続けるときの負担は軽くならない、という形になります。
商圏が全国に広がるのは有利ではないのですか。
商圏が広がると、同時に競合も全国になります。小さい商圏で高いシェアを取るのが、利益率の高い事業モデルの基本形です。シェアが高いと紹介や口コミが働いて集客の費用が下がりますが、全国に生徒が散っていると、同じ学校や同じ地域に自塾の生徒がいないため、その経路からの紹介が起きにくくなります。新規の獲得を広告に頼る比率が上がります。家賃は場所そのものへの支払いではなく、その地域でシェアを取るための投資でもあります。
通塾時間がゼロになることは訴求になりますか。
近所に通える塾がある層に対しては、選ぶ理由になりにくい要素です。通塾時間の短さは、それ単体では他の塾と比べる基準になりません。オンラインが選ばれているのは、近くに選択肢がない地域から難関校を狙う場合や、特定の試験・特定の科目で対面の塾より詳しい相手を探している場合です。訴求するなら「移動しなくてよい」ではなく「ここでしか受けられない」を前に出すことになります。
オンラインにすると法律上の扱いは変わりますか。
変わり得ます。特定商取引に関する法律施行令別表第四(第二十四条、第二十五条、第三十条、第三十一条関係)は、学習塾と家庭教師を場所と対象者の2つで分けています。場所は、五の項が「役務提供事業者の事業所その他の役務提供事業者が当該役務提供のために用意する場所において提供されるものに限る」、四の項が「五の項に規定する場所以外の場所において提供されるものに限る」。対象者は、五の項が「学校教育法第一条に規定する学校(幼稚園及び大学を除く)の児童、生徒又は学生を対象としたものに限る」で、四の項にはこの限定がありません。教室に通わせず自宅で受けさせる形は四の項に当たり得ますが、オンラインであることだけで決まるわけではありません。当てはまる項が変われば、中途解約のときに請求できる上限が20,000と50,000、役務の提供前に解除されたときの上限が11,000と20,000で変わります。規制の外に出るわけではなく、当てはまる項が違うということです。自塾がどちらに当たるかの判断は本サイトでは行いません。
オンライン塾の損益分岐生徒数はどう出しますか。
計算の形は教室型と同じで、月の固定費を生徒1人あたりの限界利益で割ります。違うのは固定費に何を入れるかです。家賃が無いぶん固定費は小さくなりますが、広告費を変動費として扱うと計算が実態からずれます。オンラインでは新規獲得が止まると在籍が減っていくため、広告費は毎月出続ける前提で置くほうが安全です。固定費に入れて計算してください。この置き方をすると、家賃が無いことによる損益分岐生徒数の低さは、見た目ほど大きくありません。
既存の教室にオンラインを足すのはどうですか。
統計と矛盾しない形です。経済構造実態調査(乙調査)全規模の部で指導にインターネットを使う事業所の割合は2019年の27.9%から2020年に42.8%へ上がりましたが、経済構造実態調査(費用内訳割合)で費用に占める賃借料(土地・建物)は2019年の12.9%から2025年の10.5%までしか下がっていません。オンライン対応が広がった一方で、費用に占める家賃の比重は落ちていないということです。ただし賃借料は割合なので、教室を持ち続けたからなのか賃料が上がったからなのかまでは分けられません。既存の教室があるなら、置き換えではなく、休んだ生徒の振替や通えない距離の生徒への対応として足す形が、既存の集客を保ったまま届く範囲だけを広げられます。
小さい塾ほどオンラインに向いているのではないですか。
統計では逆の分布になっています。経済構造実態調査(乙調査)全規模の部の2020年の値では、事業従事者4人以下の事業所でインターネットを活用した指導を採用していたのは25.3%、10〜29人では73.9%でした。単独事業所は24.6%、支社は77%です。規模が小さいほど採用していません。オンラインで生徒を集めるには、先に見つけてもらう手段が必要で、それを用意できるのは人手や広告予算のある事業者だからだと考えられます。ただしこの統計は既存事業所の採用状況で、オンライン専業で新しく開業した人は含まれていません。

本ページで使用した統計と条文

  • 総務省「経済構造実態調査」事業区分(中分類、一部小分類)別費用内訳割合(統計表ID 0003414957/0003433761/0004007366/0004018723/0004054010/0004055483)。 政府統計の総合窓口(e-Stat)のAPIから当社が取得。学習塾は産業小分類823。2021年の表は存在しません。
  • 総務省「経済構造実態調査(乙調査)」【33学習塾】全規模の部 第4表(統計表ID 0003448907/0003450266)。 インターネットを活用した指導方法の採用の有無別事業所数。この設問は2020年が最終観測点です。
  • 総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査」産業別集計(サービス関連産業に関する集計)(統計表ID 0004003273)。受講生数は2021年6月1日時点の在籍者数、売上は年間値。年度内の入退塾により1人あたりの値は上振れする。
  • 特定商取引に関する法律施行令(351CO0000000295)別表第四(第二十四条、第二十五条、第三十条、第三十一条関係)。e-Gov 法令検索のAPIから現行条文を取得。
  • 消費者庁「特定継続的役務提供」Q&Aの「家庭教師」の項

本ページの計算は、いずれも上記の一次データから当社が行いました。集計ベースの異なる数字を混ぜて1事業所あたりの値を出さないよう、導出は単一の統計表の中で完結させています。