ATTENDANCE
塾の入退室管理|打刻が続く仕組みと、認証方式ごとの運用負荷
入退室管理は、機能の差が小さい領域です。どの製品も、打刻して保護者に通知する、という中身は変わりません。差が出るのは製品ではなく運用のほうです。
実際に困るのは、入れたあとです。打刻を忘れる生徒が出たとき、通知が届かなかった日を保護者にどう説明するか。認証方式を変えると、講師の手間がどこで増えるか。記録を誰がいつまで持つか。
打刻の定着、認証方式ごとの手間、記録を誰がいつまで持つか。この3つを決めてから製品を見る順で書いています。個社製品の比較表は作りません。料金と機能は各社が随時変えるため、当社が実測できない値を並べても公開直後に古くなります。
SHORT ANSWER
結論から。 入退室管理でつまずくのは、打刻が続かないことです。1日でも記録が欠けると、その日は通知が届かず、保護者から「今日は連絡が来ませんでしたが」という問い合わせが来ます。通知の仕組みは、欠けた日の説明という新しい業務を生みます。 製品を選ぶ前に、打刻し忘れたときに誰がどう補正するかを決めてください。
認証方式ごとの運用負荷は第3章、費用の見方は第4章、記録の扱いは第5章、導入から定着までの手順は第6章、保護者への案内は第7章で扱います。 導入そのものの是非は塾管理システムのページで先に判断してください。
1. 何のために入れるのかで、必要な機能が変わる
入退室管理を検討する理由は、おおむね次の3つに分かれます。どれが自塾の理由かで、必要な機能も、打刻が欠けたときの困り方も変わります。
| 入れる理由 | 要るもの | 記録が欠けると |
|---|---|---|
| 保護者への到着通知 | 即時の通知。到着と退室の両方 | 通知が届かず、問い合わせが来る。安心のために入れたものが不安の種になる |
| 出欠の記録・集計 | 月次の集計。振替と欠席の区別 | 集計が合わず、手で直す作業が増える |
| 講師の勤怠管理 | 生徒とは別の打刻。給与計算との連携 | 給与の計算に直結するため、修正の手間が最も重い |
3つとも欲しくなりますが、同時に始めると打刻の対象が生徒と講師の両方になり、定着させる相手が2倍になります。まず1つに絞って、運用が回ってから広げるほうが確実です。
通知は、新しい業務を生みます
通知を始めると、保護者は毎回それが届く前提で待つようになります。届かなかった日は連絡が来ます。つまり通知の導入は、通知が届かなかった日の説明という業務を新しく生みます。この業務が発生する頻度は、打刻の定着率でほぼ決まります。この業務への答えは第7章で扱います。
防犯として期待できること、できないこと
入退室管理は防犯の文脈でも語られます。夜間に小中学生を預かる以上、保護者から実際に聞かれる論点です。ただし打刻の仕組みが何をして、何をしないのかは分けておく必要があります。当社は防犯効果の実測を持たないため、効果があるともないとも書きません。書けるのは機能の切り分けだけです。
- 打刻は記録であって、入室の可否を制御しません。端末を置いても扉は開いたままです
- 扉の施錠やオートロックは別の設備です。入退室管理と連動する製品もあれば、しない製品もあります
- 防犯カメラとは目的も保存期間も違います。導入するなら第5章の5項目を、カメラについて別立てで決め直すことになります
- 第3章で触れる打刻時の顔写真は、本人が打刻したことの確認であって、不審者を検知する機能ではありません
保護者に「入退室管理を入れました」と伝えると、施錠まで含めて対策されたと受け取られることがあります。何をする仕組みなのかを、案内の時点で言い分けておいてください。案内に入れる要素は第7章で扱います。
2. 打刻が続かないと、入れた意味がなくなる
入退室管理が何かの役に立つとすれば、それは記録が毎回残ることが前提になります。ここが他の管理業務と違います。請求は月に1回のまとめ作業なので、多少手作業が残っても成立します。入退室は生徒が来るたびに、生徒自身の操作で発生するため、教室側だけでは完結しません。
打刻が欠ける原因は、だいたい次のどれかです。
- カードやスマートフォンを忘れた 忘れた生徒がどうするかを決めていないと、その場で講師が対応することになり、授業前の時間が削られます。
- 退室の打刻を忘れて帰った 到着時は保護者への通知があるため意識されますが、退室は忘れられがちです。退室だけが欠けた記録が積み上がると、滞在時間の集計が使えなくなります。
- 端末の前が混む時間に飛ばした 授業開始の直前に生徒が集中すると、列ができて打刻せずに教室へ入る生徒が出ます。端末の数と置き場所の問題です。
- 講師が代わりに打刻した その場は回りますが、記録が実態と合わなくなります。代理打刻を許すかどうかは、先に決めておく必要があります。
この図の読み方
打刻の欠損は率で語られますが、作業として現れるのは件数のほうです。 在籍20人・欠損率1%なら月1.6件で済みますが、 在籍60人・欠損率5%だと月24件になります。 月額は在籍が増えても段階的にしか上がりませんが、補正は在籍にも欠損率にも比例します。 だからこそ、第2章の「先に決めておく3つ」を導入前に決める価値があります。
1件あたりの補正にかかる時間は置いていません。 当社はその実測を持っていないため、時間単価を掛けた金額は示しません。 導入後に自塾で計測してください。
先に決めておく3つ
1. 忘れた生徒はどうするか。講師が代理で入力するのか、あとでまとめて補正するのか。誰がやるかまで決めます。
2. 打刻が無い日の通知はどうするか。「通知が届かない=来ていない」と保護者に受け取られます。欠席なのか打刻漏れなのかを、教室側が区別できる形にしておきます。
3. 補正した記録は残すか。あとから直した記録と、実際に打刻された記録が区別できないと、集計の信頼性が下がります。
この3つが決まっていない状態で導入すると、運用が現場ごとに分かれます。講師によって対応が違えば、保護者から見ると通知が届く日と届かない日が不規則に見えます。仕組みの信頼は、記録が毎回残ることで成り立ちます。
3. 認証方式は、機能ではなく運用負荷で選ぶ
製品の比較では認証方式が機能として並びますが、実際に効くのは忘れたとき・失くしたときに誰が何をするかです。生徒の年齢によって、成立するかどうかが変わります。
読み方 左下に行くほど楽ですが、そこに入る方式はありません。導入が簡単なものほど、打ち間違いや補正といった毎日の作業が残ります。 判断は「どれが高機能か」ではなく、自塾がどちらの手間なら払えるかです。開校直後で在籍が少ないうちは毎日の手間も小さいので、あとで効いてきます。
当社の整理です。統計ではありません。位置は方式の性質から相対的に置いたもので、製品ごとの実測値ではありません。 個社製品の比較は本サイトでは行いません。導入前に自塾の在籍数と講師の人数で、毎日の手間が誰の時間から出るかを確かめてください。
| 方式 | 忘れ・紛失への強さ | 向く対象 |
|---|---|---|
| ICカード | 忘れる。失くすと再発行の費用と手間が出る | 中高生。持ち物の管理ができる年齢 |
| QRコード(印刷) | 忘れるが、再発行は印刷するだけで済む | 小学生を含む全年齢。予備を教室に置ける |
| スマートフォンのアプリ | 端末を持っている前提。充電切れもある | 生徒本人が端末を持っている場合。持たせていない家庭が多い学年では成立しにくい |
| 名前を選ぶ方式(画面から選択) | 忘れ物が起きない。ただし他人の名前も押せる | 小規模。在籍が増えると一覧から探すのに時間がかかる |
生徒本人が端末を持っていない学年で、スマートフォンのアプリを前提にすると打刻が成立しません。逆に持ち物の管理に慣れていない学年に全員カードを配ると、忘れと紛失の対応が積み上がります。対象学年と、その学年の生徒が何を持って通っているかを先に置いてから、方式を見てください。なお、ここで示した向き不向きは当社の推論であり、方式ごとの定着率を実測したものではありません。
端末の数と置き場所も、方式と同じくらい効きます。授業の開始時刻が揃っている集団指導では、その時刻に打刻が集中します。生徒ごとに時間割が違う個別指導では分散しますが、そのぶん打刻の時刻がまちまちになり、誰が来ていないかを目視で把握しにくくなります。個別指導の収益構造は個別指導塾のページで扱っています。
端末をどこに置くかで、打刻が飛ぶかが決まる
第2章で挙げた欠損の原因のうち「端末の前が混む時間に飛ばした」は、置き場所と台数の確認対象です。授業開始の直前に何人が同時に入ってくるかを、時間割から数えてください。その人数が捌けるかどうかが、必要な台数です。
- 入口から教室へ向かう動線の途中に置く。通り道から外れた場所にあると、急いでいる生徒は飛ばします
- 待機の列が扉や階段をふさがない向きにする。列が外にはみ出すと近隣への配慮の問題にもなります
- 退室側の動線でも目に入る位置にする。退室の打刻は忘れられやすいため、帰り際に視界へ入るかが効きます
- 台数を足すかどうかは、契約前に2台目で月額が上がるかを確認してから決めます(第4章)
必要な台数の目安は、同時に入ってくる人数 ÷ 1台あたりで捌ける人数で出せます。1台あたりの処理時間は製品と方式で変わるため、体験やデモのときに実際に何秒かかるかを測ってください。当社は方式ごとの処理時間の実測を持っていないため、秒数の目安は示しません。
写真を撮る機能は、別の判断が要ります
打刻と同時に顔写真を撮って保護者に送る製品があります。本人が打刻したことの確認にはなりますが、生徒の画像を継続して取得・送信・保存することになります。何のために撮るのか、どれだけ残すのか、誰が見られるのかを決めて、生徒と保護者に伝えたうえで使う機能です。第5章で扱います。
4. 効いてくるのは月額より、端末費と打刻の補正
月額を生徒何人分の限界利益に換算する手順は塾管理システムのページにあります。入退室管理の価格帯(月額3,000〜15,000円)は当社のモデルだといずれも生徒1人分に収まるため、月額は判断の分かれ目になりません。効いてくるのは、月額以外に発生する3つの費用です。
読み方 横軸は、その事務に月あたり何時間かかっているかです。人に頼めば時間に比例して費用が増え、仕組みは量が増えても月額が変わりません。 この例では月12.5時間を超えると仕組みのほうが安くなります。逆に、それ以下なら入れないほうが安く済みます。 判断に要るのは製品の機能一覧ではなく、いま何時間かかっているかという1つの数字です。
モデルです。統計ではありません。時給1,200円・月額15,000円は形を見せるために置いた値で、相場を示すものではありません。 自塾の実際の時給と、検討している製品の月額に置き換えてください。導入時の初期費用と、乗り換えにかかる手間は別に見る必要があります。
| 費用 | いつ発生するか | 在籍が増えると |
|---|---|---|
| 端末の購入費 | 初月。カードリーダー・タブレットなど、方式によって要否が変わる | 打刻が混む時間があれば台数を足すことになる |
| カード・タグの再発行 | 紛失のたび。カード方式でのみ発生する | 在籍に比例して積み上がる。QRの印刷なら実質ゼロ |
| 打刻の補正にかかる時間 | 毎月。欠損した記録を手で直す作業 | 欠損率が同じなら在籍に比例して増える |
3つ目が最も見落とされます。月額は在籍が増えても段階的にしか上がりませんが、補正の作業は欠損率が下がらない限り在籍に比例して増えます。第2章で挙げた「先に決めておく3つ」を決めていないと、この作業が毎月積み上がります。
比較の対象になる側は、第1章で選んだ理由によって変わります。導入前に、自分が選んだ理由に対応する項目だけを1か月測ってください。減ると決まっているわけではないため、導入後に並べて確かめるための基準として取ります。
| 入れる理由 | 導入前に測っておくもの |
|---|---|
| 保護者への到着通知 | 通塾確認の問い合わせ件数と、1件あたりの対応時間 |
| 出欠の記録・集計 | 月次の出欠集計にかかっている時間と、振替の突き合わせで発生する手戻りの回数 |
| 講師の勤怠管理 | 給与計算の前に勤怠を集計・確認している時間と、修正が発生した件数 |
見積もりで、入退室に固有で聞く6つ
管理システム全般の確認項目は塾管理システムのページにあります。ここは入退室に固有のものだけです。
- 端末は自前調達か指定品か。買い切りかレンタルか。故障時の保守はどちらの負担か。所有の形で解約時の扱いが変わります
- カード・タグの単価と、再発行時の費用。紛失のたびに出るため、在籍が増えるほど積み上がります
- 2台目を足すと月額が上がるか。料金が在籍数のどの刻みで変わるか。刻みをまたぐと上の表の前提が変わります
- 保護者側のアプリが有料か。通知先を複数登録すると課金対象が増えるか。両親ともに通知を受けたい家庭は珍しくありません
- 打刻の補正が管理画面から何操作でできるか。ここが重いと、3つ目の費用が跳ね上がります
- 解約時に打刻履歴と写真を出力できるか。第5章の5つ目に直結します
月額が決まったら、固定費に足したときに損益分岐生徒数がどう動くかを収支シミュレーターの固定費欄で確かめられます。
限界利益17,500円は当社が置いたモデルです(実効単価25,000円 × 変動費率30%を差し引いた額)。当社が置いたモデルケースであり、業界平均でも統計値でもありません。単価・変動費率とも自塾の実績に置き換えてください。
5. 記録の扱いは、導入前に5つ決めておく
入退室管理が扱うのは、生徒の氏名と結びついた、いつどこにいたかの記録です。写真を撮る製品では、その画像も蓄積されます。機能としては便利ですが、扱うものの性質は他の管理データと違います。
当社は法令の解釈を示す立場にありません。以下は法的な要件ではなく、導入前に決めておくと後から説明できる項目として挙げるものです。
- 何を記録するか 時刻だけか、写真も撮るか。撮る場合はその目的を説明できるようにしておきます。
- 誰が見られるか 教室長だけか、講師全員か、アルバイト講師も含むか。閲覧できる範囲を決めておかないと、実質的に全員が見られる状態になります。
- どれだけ残すか 在籍中だけか、退塾後も残すか。残す場合の期間を決めます。決めていないと、退塾した生徒の記録が無期限に残ります。
- 保護者にどう伝えるか 入塾時の説明と書面に、何を記録して何に使うのかを入れておきます。導入後に始める場合は、既に在籍している生徒の保護者にも改めて伝えます。
- 解約時にどうするか 製品を乗り換えるときに、記録を持ち出すのか消すのか。提供会社側でどう扱われるのかも確認しておきます。
判断は専門家に確認してください
個人情報の取り扱いについて、どの法令が適用され、自塾の運用が要件を満たすかは、本サイトでは判断できません。とくに未成年の情報を継続的に取得する運用になるため、契約前に弁護士など専門家にご確認ください。上の5項目は、確認するときの論点として使ってください。
6. 入れると決めてから、打刻が回るまで
製品が決まってから、記録が毎回残る状態になるまでにやることを、時間の順に並べます。日数や期間は当社が置いた前提です。業界の標準ではないため、自塾の年度と季節講習の予定に合わせて動かしてください。切り替える時期そのものの選び方は塾管理システムのページで扱っています。
読み方 赤い棒は半数に届いていない区分、青い棒は多数派になっている区分です。10〜29人のところで入れ替わります。 規模が小さいうちは使っていない教室のほうが多く、それ自体は珍しい状態ではありません。ただし規模が上がると逆転するため、人を増やす計画があるなら、増やす前に決めておくほうが移行が軽く済みます。
出典: 経済産業省・総務省「経済構造実態調査」(2020年)【33学習塾】事業従事者5人以上の部 第3表(統計表ID 0003450269)。政府統計の総合窓口(e-Stat)のAPIから当社が取得し、割合は当社で算出しました。 事業従事者5人以上の事業所が対象。「インターネットを活用した指導方法」の採用の有無であり、管理業務のシステム化の有無ではない。事業従事者5人以上が対象のため、個人で運営している教室はこの集計に含まれません。
導入前 — 運用担当を1人決めて、デモで打刻を見る
最初に決めるのは製品ではなく運用担当です。第2章で決めた3つ(忘れた生徒の扱い/打刻が無い日の通知/補正した記録を残すか)を維持し、実際に補正を回す人を1人置きます。ここが決まらないまま始めると、講師ごとに対応が分かれます。
体験やデモで見るのは、機能の多さではなく打刻が回るかどうかです。確認は4点に絞れます。
- 1人あたりの操作にかかる時間。授業開始の直前に集中する時間帯を捌けるかが、第2章の原因3に直結します
- 打刻し忘れを直す画面を、教室長以外の講師でも触れるか。触れないと補正が1人に溜まります
- 補正した記録と、実際に打刻された記録が区別して残るか。第2章の決めごと3が製品側で成立するかの確認です
- 打刻が無い日を、教室側の画面で一覧できるか。欠席と打刻漏れを区別できないと、第7章の説明ができません
切り替え日まで — 名簿の移行で崩れる4か所を先に潰す
生徒名簿を移すとき、あとから効いてくるのは次の4か所です。
- 同姓同名と旧字などの表記ゆれ。名前を選ぶ方式では、第3章で挙げた「他人の名前も押せる」という弱点がそのまま出ます
- 退塾済みの生徒を持ち込むかどうか。持ち込むなら、第5章で決めた保存期間をここで適用します
- 学年の更新をいつ反映するか。年度をまたぐ前に移すと、移行直後にもう一度全件を直すことになります
- 保護者の連絡先が誰のものか。父母の両方か、片方か。通知先が複数になると費用が変わる製品もあります(第4章)
カードやQRを配る方式では、配布と登録の締切を切ります。締切を切らないと、切り替え日に持っていない生徒が残り、初日から補正が発生します。講師には切り替え前に一度、自分で打刻と補正を通しで操作してもらってください。
当社の前提での最初の1か月 — 旧方式と並べて、欠損を毎週見る
切り替え直後は、旧来の出欠の付け方をすぐに捨てないでください。1か月だけ並行して、記録が一致するかを確かめます。ただし第8章で触れるとおり、並行を続けたまま常態化させると作業が二重になります。やめる日を先に決めておきます。
この1か月は、欠損を週1回見ます。原因が第2章の4つのどれかを毎回記録すると、置き場所の問題なのか、周知の問題なのか、方式が合っていないのかが分かれます。原因を分けずに「まだ慣れていない」で片付けると、原因が残ったままになります。
定着後 — 月1回だけ見る項目を決める
毎週見続けるのは現実的ではありません。この前提では、定着後は月1回に落とし、見る項目を絞ります。欠損率、カードの再発行件数、そして退塾した生徒の記録をどうしたかです。3つ目は第5章で決めた保存期間の運用そのもので、決めただけで実行していない状態になりやすい項目です。
日数と期間は、当社が置いた前提です
並行運用を1か月、最初の1か月は週次、以降は月次。この置き方に業界の裏づけはありません。当社は塾の運営実績を持たないため、標準的な定着日数の実測も持っていません。自塾の年度と季節講習の予定に合わせて動かし、期間そのものより「やめる日を先に決めておく」ことを守ってください。
7. 保護者に何を伝えるか、届かなかった日にどう答えるか
第1章で触れた「通知が届かなかった日の説明」に、どう答えるかを扱います。答えの大半は、導入前に何を伝えたかで決まります。
導入前の案内に入れる5つ
- いつから始まるか。切り替え日を明示します
- 通知が出る条件。打刻されたときだけ出る、という事実です
- 届かなかった日が、欠席を意味するとは限らないこと。打刻漏れでも届きません
- 届かないときの連絡先。誰にどう聞けばよいかを先に示します
- 何を記録し、誰が見て、どれだけ残すか。第5章の1〜3を保護者向けに書き下したものです
鍵は3つ目です。これを導入前に先出しするか、問い合わせが来てから説明するかで、同じ内容でも受け取られ方が変わります。先に言えば運用の一部として伝わり、後から言うと言い訳に聞こえます。
伝える経路は、在籍と新規で分ける
すでに在籍している家庭には、切り替え前に一斉に伝える必要があります。切り替え後に入る家庭には、入塾の案内に組み込みます。後者を用意しておかないと、新規の保護者だけ何も知らないまま通知が届く状態になります。
保護者側にアプリの登録や連絡先の設定が要る製品では、登録の締切を切ります。締切が無いと揃いません。揃わないまま始めると、通知が届く家庭と届かない家庭が混在し、届かない側からの問い合わせが初月に集中します。
届かなかったと連絡が来たときの順序
問い合わせを受けたら、先に事実を確認してから答えます。順序を決めておかないと、対応した講師によって答えが変わります。
- その日、生徒は来ていたか(出欠の実態)
- 打刻の記録はあるか(教室側の画面で確認)
- 記録があるのに届いていないなら、送信側と受信側のどちらで止まっているか
3つ目でよくあるのは、受信側の設定です。メールで送る製品では迷惑メールに振り分けられていることがあり、アプリやメッセージアプリで送る製品では通知そのものを切っている、あるいはブロックされていることがあります。どちらも教室側の画面からは「送信済み」に見えます。
来ていないのに通知が届かない、が最も危ない
1と2がどちらも「無い」場合、生徒は来ていません。このとき保護者は「通知が届かない=システムの不具合」と受け取る可能性があります。欠席の連絡が来ていない生徒をどう扱うかは、入退室管理とは別に決めておく必要があります。通知は来ていないことを知らせる仕組みではなく、来たことを知らせる仕組みだからです。
8. 効果は、導入前後を並べて確かめる
「入退室通知で保護者の安心につながり、退塾が減る」という説明を見かけます。当社は、退塾率が下がったという実測を持っていません。そのため、効果があるとは書きません。
確かめる方法はあります。導入前の3か月と導入後の3か月で、次の3つを並べてください。
- 月次の退塾率(当月の退塾数 ÷ 前月末の在籍数)。季節性があるため、前年の同じ月とも比べます
- 通塾確認の問い合わせ件数。減っていれば、少なくとも保護者の確認の手間は減っています
- 打刻の欠損率(打刻が無かった通塾日 ÷ 通塾日)。これが高いままだと、上の2つが動いても入退室管理の効果としては読みにくくなります
3つ目を先に見てください。打刻が定着していない状態では、通知も集計も使える状態になっていないため、上の2つを測っても何を測ったことになるのか分かりません。
欠損率は、分母をどこから取るかで変わる
欠損率は「打刻が無かった通塾日 ÷ 通塾日」ですが、分母の通塾日をどこから取るかを決めないと数字が動きます。打刻記録から数えると、打刻が無い日は分母にも入りません。
- 分母は時間割(通塾予定)から取り、打刻記録と突き合わせます。予定にあって打刻が無い日が欠損です
- 振替・欠席連絡・休講をどう除くかを先に決めます。除かないと、欠席が欠損に混ざって率が上がります
- 到着と退室は分けて数えます。第2章のとおり退室だけが欠けやすく、合算すると原因が見えません
- 集計の頻度を先に決めます。当社の前提では月1回、導入直後の1か月だけ週1回にしています(第6章)。業界の標準ではありません
- 何か月見て判断を打ち切るかを、先に決めます。決めないと「まだ慣れていない」が続きます
目安の水準は、第2章の図で使った1%・3%・5%をそのまま使えます。率ではなく月あたりの補正件数に直すと、作業として見えます。自塾の在籍数で件数を出し、その件数が許容できるかで判断してください。
退塾率が利益に与える影響と、在籍を維持するのに必要な新規入塾数は塾経営のページで扱っています。1ポイントの差が募集の負担を大きく変えるからこそ、効果は感覚ではなく数字で確かめる価値があります。
9. よくあるご質問
- 塾に入退室管理は必要ですか。
- 保護者から「子どもが着いたか分からない」という声が出ているか、通塾の確認に電話や個別連絡で時間を取られているかで判断します。どちらも無いなら急ぐ必要はありません。導入する場合も、打刻が続く運用にできるかを先に確かめてください。記録が欠けると、通知が届かない日が生まれ、かえって問い合わせが増えます。
- ICカードとQRコードとアプリのどれがよいですか。
- 生徒の年齢と、忘れ物への耐性で選びます。ICカードは操作が単純ですが紛失と忘れが起きます。QRコードは印刷して配れるぶん再発行が容易です。スマートフォンのアプリは生徒本人が端末を持っている前提が要るため、持たせていない家庭が多い学年では成立しにくくなります。なお、この向き不向きは当社の推論であり、方式ごとの定着率を実測したものではありません。どの方式でも、打刻し忘れたときに誰がどう補正するかを決めておかないと記録が欠けます。
- 入退室通知を入れると退塾は減りますか。
- 当社は退塾率が下がったという実測を持っていないため、減るとは書きません。確かめ方は第8章で扱っています。測っていない改善は、あったかどうかも分かりません。
- 入退室管理でいちばん費用がかかるのはどこですか。
- 月額ではありません。初月の端末購入費、カード方式での再発行、そして打刻が欠けたときの補正作業です。とくに補正は、欠損率が下がらない限り在籍に比例して毎月増えます。金額の相場を本サイトで出していないのは、料金を公開していない製品があり、公開されていても在籍数や機能で段階的に変わるためです。
- 無料のものや表計算ソフトの自作でも足りますか。
- 寄せたい業務が「到着の通知」だけで、在籍が少ないうちは足りることがあります。入退室に固有の条件を挙げます。通知の送信手段が従量で有料になる場合があること、打刻の端末は自作でも結局必要になること、打刻が無い日を一覧する画面や補正の仕組みを自分で作らない限り補正が手作業のまま残ることです。無料で足りる条件そのものは塾管理システムのページで扱っています。
- すでに管理システムを使っていますが、入退室だけ別に入れるべきですか。
- いま使っている管理システムに入退室の機能があるなら、まずそちらを確認してください。別に入れると生徒名簿が2つになり、入塾・退塾・学年更新のたびに両方を直すことになります。この二重管理は在籍が増えるほど重くなります。逆に、いま入退室だけを単体で入れて、あとから管理システムを導入する場合は、名簿と履歴の移行という手戻りが出ます。単体を選ぶなら、将来どちらに寄せるかを先に決めておいてください。
- 入退室の記録は個人情報にあたりますか。
- 本サイトでは法令上の該当性を判断できません。実務として言えるのは、扱うものが生徒の氏名と結びついた通塾時刻の記録であり、写真を撮る製品ではその画像も蓄積されるということです。何を記録し、誰が見られて、どれだけの期間残すのかを決めて保護者に伝えておくと、後から問われたときに説明できます。適用される法令と、自塾の運用がその要件を満たすかについては、弁護士など専門家にご確認ください。
本ページについて
記録の取り扱いで参照する法令・ガイドライン
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)(個人情報保護委員会)— 参照先の法律です。入退室の記録が同法上どう位置づけられるか、自塾の運用が要件を満たすかの判断は、本サイトでは行いません。
- 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)(個人情報保護委員会)— 同法に関する参照先のガイドラインです。内容の解釈は本サイトでは行いません。
上記は所在を示すためのもので、当社が該当性や要件充足を判断したものではありません。本ページの限界利益は当社が置いたモデルケースであり、業界平均でも統計値でもありません。効果を保証するものでもありません。個人情報の取り扱いおよび契約内容の解釈については、弁護士などの専門家にご確認ください。
当社の立場について。当社はいずれの入退室管理システムの提供会社とも販売代理の関係を持っていません。一方で、ご相談の結果として事業者をご紹介する場合に、紹介料・広告料・成果報酬といった対価を先方から受け取る可能性があります。判断材料は本ページと同じ計算を優先し、条件が合わない場合は見送りをお勧めします。